アップルのデザイナーたち、そしてデザインの時代

今年の夏は、アップルとサムスンの法廷劇が注目を浴びていた。
注目の的となっていたのは、その法廷劇の中で垣間見得る各社の、そしてとりわけアップルの開発に関連するプロセスだ。
アップルは、どのようにして人々を魅了し続ける製品を生み出しているのか。そのプロセスは一体どのよなものなのか。どのような魔法がアップルに存在するのかは、誰でも興味をもつところだ。

その法廷劇の話題で、注目を浴びたのが、アップルのデザイナーチームの構成である
記事ではこのように書かれている。
"Apple may be a huge company with tens of thousands of employees, but most of its products are initially conceived by a small group of just 15 or 16 designers sitting around a kitchen table."
アップルは数万人を擁する大企業だ。その大企業が生み出す製品のほとんどは、キッチンテーブルを囲んだ15、6名で構成される小さなデザインチームから生み出されたものものなのだ。

デザインに関するコアな部分が、少人数のチームで生み出されていることは、あのウォルター・アイザックソン氏のジョブズ伝にも窺い知れる。
そのデザイン及び製品戦略の中核をなすアイブの部屋は、厳密に入出が管理されておりごく限られた人物しか入出を許されない。
その部屋では、製品のデザインそして製品戦略が議論される。
キッチンテーブルには、アップルの製品がテーブルの上にずらりとならべられており、アップル製品の歴史が一望できる。そしてそこにはまだ市場に出ていない、ベールに包まれた製品のおぼろげな姿が、それぞれの人々の頭の中に描かれいる。
Jobsに、そしてIveの頭の中に描かれたプロダクトは、一体どのようなものであったのか。

Appleのデザイナーというとすぐ思い浮かぶのは、あのJonathan Ive氏である。上の記事に書かれている様に、デザイナーは、Ive氏のみではない。
それでは、どの様なデザイナーがいたのだろうか。
この記事では、Ive氏を含めて10名のデザイナーが紹介されている。
興味のある方は、ご覧下さい。
ただIve氏以外の名前は、残念ながらあまりおいらも聞いたことがない。
おいらが知っているのは、最近サムスンとの特許問題で取りざたされた法廷裁判で、参考人としてちょっと話題になった西堀晋氏くらいだ。
でも、どのデザイナーも情熱に燃えているんだろな。
情熱に勝るものはないからね。

さて、それでは何故にデザインが重要なのか。デザインは何をもたらしてくれるのか。
優れたデザイン、UIは高度な技術を隠蔽してくれるのである。
優れたデザイン、UIはユーザの操作の奥に隠れている高度な技術を隠蔽してくれるのである。
優れたデザインとUIのもとであれば、ユーザはデバイスを操作している過程で、その過程の中で動き回っている高度な技術や整備されたインフラを何ら意識することがないのである。
優れたデザインとUIは、デバイスを操作する上で直感的であり、操作者がやり遂げたい処理を完遂させることに何ならストレスを感じさせることがないのである。

優れたデザインとUIは、奥に潜む高度な技術を隠蔽してくれるのである。

iPadがこれほどまでに急速に普及した理由もそこにある。
このへんの感覚をうまく書いた記事がある。
ちょっと古い記事であるが、このへんの感覚をうまく表している一文があるので引用する。
”実はそのときですら、iPadというのは新しいものでありながらも「日常」のものであることこそが、皆に受け入れられる要因だったのだ。自然に触ってみることができた。使うためのレッスンなどは必要なかった。電源を入れればすぐに誰でも使うことができたのだ。”

iPadの普及を支えている要因がもうひとつある。
それはiPhoneの存在だ。
iPhoneの最大の功績は、KBとマウスをなくしたことにある。マルチタッチ入力の可能性を最大限に引き出し、KBとマウスをなくしたことにある。
おそらくJobs氏は、携帯電話を作りたかったわけではなく(当然のことながらモバイルの時代が到来することも見越していたであろうが)、このタッチ入力のUIを世の中に普及させたかったのだ。
日々人びとが使う携帯電話にタッチ入力のUIを取り込むことにより、タッチ入力のUIを一気に普及させてしまったのである。
このタッチ入力のUIの普及をベースに、iPadの成功があるのだ。
思うに、iPadは現在成功したデバイスであるが、世の中にでてくる順番が逆だったら(Apple内部ではiPadの原型の方が先に開発されている)、iPadが先に世の中にでて次にiPhoneが世の中にでていたら、これほどのiPadの成功はなかったかもしれない。