アップル帝国の正体

最近あまり本を読む時間がなかったのだが、田舎に帰省している間に、『アップル帝国の正体』を読み上げた。

アップル帝国の正体

アップル帝国の正体

本書を読み上げた感想は、Appleのものづくり対する執念である。

液晶パネルの供給確保のために、シャープの亀山第1工場に約1000億もの資金を投入し、Appleの専用工場にしてしまう執念。
コンタクトするメーカは名のある大企業ばかりではない。
iPodの裏蓋を理想の輝きにするために、新潟にある中小企業にもコンタクトをとる執念。
コストに対しても、部品一つ一つに購買責任者をつけてコスト削減に邁進する執念。
部材の納期についても、数ヶ月先の生産予定を1日単位で立てるように要求する執念。
ここまでやるのか、と驚かされるばかりだ。
ただ、この執念があってこそ、今のAppleがあるのだろう。
本書は、Appleと関わった日本のメーカや日本人を通して、Appleの凄さをうまく描き出している。

とはいえ、やはり気になるのは最終章である。
最終章は、"Apple神話は永遠なのか"と題されている。
最近のAppleのつまづきがあげられている。
Googleの地図アプリを標準搭載から排除し、自社の地図アプリを標準搭載したものの、結局失敗に終わった。
タブレットも、他社の廉価版対応としてiPadminiを製品化せざるをえなかった。
2013年には、iPhone5の出荷目標も大幅な下方修正をする事態が発生した。
でもちょっと待って。
地図アプリは、つまずいてしまったけど、Flyoverは素晴らしい。Flyoverの3D描写をみると、まるで空を飛んでいる気分にさせてくれる。
iPadminiも、安さと軽さでタブレットマーケットの裾野を広げるという意味では成功だろう。成果はこれから現れる。おそらく次のiPadは、軽量化される。この軽量化は重要だ。軽量化により、iPadminiのユーザもiPadを選択する割合が増えてくるのではないだろうか。やはり、画面のサイズはiPadのサイズがベストだ。
iPhone5の発売と同時に、iPhone4とiPhone4Sはディスカウントのラインナップとして残された。多くのユーザがこのディスカウントに飛びついた。何故ならiPhone4とiPhone4SはSmartPhoneとしての完成度も高く、さらに安価となれば、誰でもが購入したくなるだろう。
良い製品をつくってしまっがゆえの結果なのかもしれない。
iPhone5は、軽量化と大画面化がなされ、さらに完成度がアップしている。おいらが思うに、HWデバイスとしてiPhone5を大きく越えるデバイスの製品化は、今後難しいのではなかろうか。
HWの進化にブレーキがかかれば、やはり安価な価格設定をされたiPhoneにユーザは流れていくだろう。

とはいえ、一番大きな懸念は、ジョブズ亡き後に、新たなプロダクトが発表されていないことだ。
一見すると、Appleは輝きを失いつつあるようにもみえる。
Appleは巨大化しすぎてしまったのだろうか?ただの大企業になってしまったのだろうか?
いや違う。Appleは、生まれ変わろうとしているのだ。今は、産みの苦しみの段階なのだ。

さて、それではAppleこれからどのように生まれ変わろうとしているのだろうか?

(つづく)

iPad5を待ちわびて。

今おいらが一番欲しいのは、iWatchやiTVではない。ましてや廉価版のiPhoneでもない。
iPad5だ。
iPad5に一番期待するのは、軽量化だ。薄さも重要であるが、薄さは軽量化が進めば結果実現できる。
昨年末にiPhone4からiPhone5に乗り換えたのだが、一番驚いたのはその軽さである。
iPhone4は137g。iPhone5は112g。たった25gしか違わない。
でもその体感は全く違う。
iPhone4は手に持つと、まだずっしり感があった。電話をしていても、あー重いなあと感じたし、ズボンのポケットに入れても、良く言えば存在感があった。
でもiPhone5はまったく違っていた。とにかく軽いのだ。
この軽さに慣れると、iPhone4は重いなあとつくづく感じてしまうのだ。

いま、おいらが使っているのはiPad2である。
iPad2も使い込んでくると、やはり重さが気になってくる。
それとiPhone5の軽さの驚きが大きかったので、iPadにも軽さの驚きを求めてしまうのだ。
そんなに軽いのがいいのであれば、iPadminiにしたら、という方もいるだろう。
iPadminiは確かに軽い。
発売当初は、購入も検討したのだが、iPadの画面の大きさに慣れているので、どうしても画面の小ささが気になる。
iPadminiは、タブレットを屋外で積極的に使いたい方や、タブレットをちょっと使ってみようかと検討している方には一番いいであろう。
ただ、iPad5がそこそこ軽量化された場合、iPad5を選択する方が、増えるのではないだろうか。

こちらの記事にもあるとおり、iPad5は薄く軽くなるだろう。
それでは、どれくらい軽くなるのだろうか。
以前のブログにも書いたのだが、おいらが予想したiPadminiの重さは350g程度であった。
実際に製品化されたiPadminiは、312gであった。
おいらの予想よりも軽い。予想よりも、さらに10%も軽い。
ということは、iPadminiの重さを予想した考え方を適用し、さらに予想誤差を考慮すれば精度の高い重さが推定できるだろう。
以前のブログで予想したのは、次の通りだ。
iPhone5の重さは、iPhone4/4Sから20%軽量化されている。
おそらくバッテリーの軽量化が一番と推測される。
この考え方を適用すれば、現行のiPadも20%軽量化が可能だろう。
現行のiPadの重さは、662gなので20%低減されると530gとなる。
この530gに、iPadminiの重さを予想したときの誤差10%(さらに10%軽くできる可能性がある)を考慮すると、477gとなる。
この重さは凄い。500g以下です。477gは無理としても、500g以下の実現性は高いでしょう。
(ただ、エンジニア視点からいうと、450g程度をターゲットとしているかもしれませんね。)
iPad2に比べても100g以上、現行のiPadに比べると150g以上軽くなります。
軽量化に加え、さらに厚さも薄くなります。
iPad2の厚さは8.8mmです。iPadminiの厚さは7.2mmです。厚さも20%薄くなています。
現行のiPad(retina版)の厚さは9.4mmです。20%薄くなると、7.5mmちょっとです(iPhone5の厚さは7.6mmなので、iPhone5よりもちょっと薄い)。iPadminiと比べると0.3mmほど厚いですが、iPadminiとほぼ同等の厚さといえます。

500g以下で厚さもiPadminiと同じとなれば、手にとったときの体感は、かなり軽い!薄い!と感じるのではないでしょうか。

iPad5が500g以下で、厚さはiPadminiと同じで製品化されたら、(可能性はかなり高いです)これはばかすか売れますね。

おいらは、そんなiPad5を待ちわびているのです。

iPhone5の真実

明けまして、おめでとうございます。今年も宜しくお願いします。

昨年末に、iPhone4からやっとiPhone5へ乗り換えた。
かれこれ使い始めて2週間ほど経った。今の印象はどうかというと、iPhone4も完成度が高いと思っていたのだが、iPhone5はそれ以上であった。
iPhone4とiPhone5を並べてみると、iPhone4がすごく旧式に見えてしまう。何と言っても、その薄さと軽さのスマートさに惚れ込んでしまうのだ。

iPhone3GとiPhone4はブラックにしたのだが、今回はホワイトにした。
ずーっと、ホワイトはちょっとチープな印象というか先入観があったのだが、電車の中でホワイトをもっている方を見かけると、以外とホワイトもいいな、と思い始めたのだ。そのホワイトに何故か目を惹きつけさせられてしまうのだ。ホワイトも、よーくみるとクリアなホワイトではない。そして、あっと思った。そうだ、このホワイトはただのホワイトではなく、白磁のホワイトなのである。
そういうわけで、今回はホワイトにした。

iPhone3Gのときは、液晶の保護シールもつけたし、ケースカバーもつけて大事に使っていた。
iPhone4のときは、液晶に保護シールをつけないことにした。これは、画面がRetinaとなり、Retinaのクリアー度を損なわずに使っていたかったからだ。最初は、画面に傷がつくのではないかと心配したが、その心配は杞憂に終わった。2年間液晶の保護カバーなしで使い続けたが、全く傷もつかず問題なしであった。
iPhone5では、ケースカバーもつけないことにした。
一つには、iPhone5そのものの外観が、見惚れるほどにスマートなデザインだからだ。この素晴らしいデザインを覆い隠す必要はない。
もう一つは、ケースカバーが、iPhone5の薄さと軽さを損なってしまうからだ。
iPhone5はとにかく薄い。そして軽い。
iPhone5の開発エンジニア達は、この薄さを追求するために1mm以下の精度で薄さを追求したことだろう。そして、この軽さを追求するため、1g以下の精度で軽さを追求しただろう。
iPhone5の薄さと軽さは、アップルのエンジニア達のたゆまぬ追求の結晶なのだ。
iPhone5の薄さと軽さを常に肌で感じていたくて、iPhone5では、ケースカバーをつけないことにしたのだ。
iPhone5には、液晶画面の保護シールもケースカバーも不要なのである。

iPhone5の外観に見惚れていて、ふと気になった。iPhone4とどうデザインが変わったのだろうか。
iPhone4につけていたケースカバーをそっと外してみた。iPhone4のむき出しの外観を見たのは2年ぶりだ。
iPhone4とiPhone5をじっくり見くらべてみて、驚いた。
iPhone5の薄さと軽さは、iPhone4の時代から約束されていたことなのだ。
まずは、下の写真を見ていただきたい。上がiPhone4で下がiPhone5である。

サイドの音量ボタンは全く同じ大きさ、全く同じデザインだ。
これは、アップルが(おそらくジョナサン・アイブが)、このデザインを今後とも変える必要がないという判断をしているということだ。確かに、これ以上ボタンの大きさを小さくしたら、操作性を損なうだろう。
次の写真を見ていただきたい。(左がiPhone5で右がiphone4である。)

皆さんもすぐに気づいたでしょう。

iPhone4の上面と背面の出っ張りを取り除いたのが、iPhone5なのである。2年の間、アップルはこの出っ張りを取り除くことに注力してきたわけである。
この出っ張りを取り除いた薄さは、音量ボタンの操作性を損なわない最低限の薄さでもある。
アップルは、操作性を損なわない究極の薄さの目標を、既にiPhone4発表時に設定済みであったということだ。
そう、iPhone5の薄さと軽さは、iPhone4発表時点で約束されていたのである。

iPhone5で操作性を損なわない究極の薄さを実現してしまったので、今後発表されiPhoneは、軽くはなるかもしれないが、これ以上薄くはならないであろう。

やっぱり気になるジェフ・ベソス

Amazonという名は多くの人が知っているが、"ジェフ・ベソス"という名を知っている人がはそれほど多くはないのではないだろか。
そもそもAmazonの創業者であるジェフ・ベソス氏について書かれた本がそれほど多くはない。
ジェフ・ベソス氏は小柄でもあり、一見するとカリスマ性に乏しい。あのぎょろっとした目も、とっつきにくい。
でも、ずーっと気になってたんですよね、ジェフ・ベソスのこと。
最近になって、ジェフ・ベソス氏に焦点をあてた本がやっと出版された。
『ワンクリック』である。
内容は予想したよりも面白かったし、ジェフ・ベソス氏はもっと評価されてもいい人物なのではないかという印象を持った。

ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛

ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛


IT業界の四天王といえば、AppleGoogleFacebookそしてAmazonだ。
この4つの企業は、いろいろな市場で競合しているが、そのコアとなるものは全く異なっている。
Appleはエクセレントな体験を享受したいという欲求を満足させてくれる。Googleは人間のもつ知りたいとう欲求を満足させてくれる。Facebookは人間本来のつながりたいという欲求を満足させてくれる。Amazonは良い商品を安く素早く手に入れるという欲求をを満足させてくれる。
4つの企業のうち一番消費者に近い位置にいるのがAmazonだ。
このため、Amazon(ジェフ・ベソス氏)が一番優先するのは顧客満足なのである。

逆にいうと、顧客満足を上げることが最優先されるので、従業員が優雅に 仕事をしているという状況にはならないが。

ネット販売の、今となっては常套手段となっている手法を、Amazonは先駆けて実施している。
この本の題名にもなっている、ワンクリックでの商品購入。商品に対する、カスタマレビューの掲載。関連した商品や関連するした本の表示。Amazonに誘導するための、アソシエイトプログラムの導入などだ。
これらAmazonが先駆けた仕組みや仕掛けてきた戦略は、顧客満足を最優先するということが、常にベースにあるのだ。
超簡単に商品を購入できる仕組みとしては、ワンクリック以上のものはないであろう。
誰もが商品を購入する際に頭の中をよぎるのは、この商品って自分が期待することを満足させてくれるのだろうかという不安である。この不安を解消してくれるのがカスタマレビューや評価の★マークだ。
お気に入りのメーカーや贔屓にしている作家以外の商品や本を購入する場合は特にそうだ。おいらもこの★マークとカスタマレビューをよく参考にする。(Amazonで購入しない場合でもだ。)
評価用の★マークとユーザレビューは、購入しようとする商品の評判や実際に購入した人の意見が聞けて非常に参考になる。それと本著でも書かれているが、評価をしていないレビューもきちんと登録されているのは、信頼感がある。評価をしないレビューも時には参考にもなる。
Amazonの購入サイトは、顧客満足を達成するために非常にうまく構成されているのだ。

顧客満足を達成するには、商品を安く提供する必要がある。
ここで重要なのは、Amazonはネットワークの力を利用して単に中抜きをしただけではない。流通の仕組みも変えている。
Amazonは巨大な自社の流通倉庫を保有している。ネット販売というと自社で在庫せずに、供給元から消費者に直接商品を届けるといった、身軽なビジネスとういイメージがあるが、Amazon顧客満足を達成するために、巨大な自社倉庫を保有している。ただ、その自社倉庫は、従来型の倉庫ではない。
何を実現しようとしたかというと、
"本を分類する、すばやく見つける、注文書と突き合わせる、梱包する"を一貫してできる"世界一の効率を誇る物流センター"なのである。
これによって、
"新品が売られいる本なら、注文を受けた日に95%を出荷できる"
体制を整えたのだ。
ネットは便利だ。パソコンの画面の中にはあらゆる商品が表示されている。
しかし、その商品をネットの世界から現実の世界に引き出すためには、物流という手段を使わざるを得ない。
ワンクリックした瞬間に注文した商品が手元に現れることが一番いいのだが、それは無理だ。
商品を、ネットの世界から現実の世界に出現させるまでの時間を短縮すればするほど、顧客満足は上がるわけである。
物流の手段が非効率的で、商品を注文してから何週間もたってから手元に届いたら、消費者はその商品にすでに興味を持っていないかもしれない。それに、消費者はそのネットの販売を利用して二度と注文をしないであろう。

本著では、ジェフ・ベソスの生い立ちについても書かれている。
生い立ちは、あのスティーブ・ジョブズとだぶるところがある。どちらも養父に育てられた。ただの偶然なのかもしれないが、両人ともどこか内から湧き上がるような執念にも似た情熱を感じる。

ジャック・ドーシーという男

おいらが、ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)という名を知ったには、ちょうど3年前のことだ。
当時は、ブログの形態をどのようにしようかと悩んでいた時で、一週間の気になるニュースをトピックスとして掲載していた時期である。
ブログの中で、ジャック・ドーシーのビデオも掲載している。
ここに再掲します。

一見すると、どこかひ弱そうで気難しいような印象があります。
おいらも当時は、えっこんな人が、Twitterの共同ファウンダーで、新たにSquareとうい会社を起こした人なの?という印象でした。
Squareとう会社が提供するサービスも、SmartPhoneで小口の決済を簡単にできるということで、アイデアはいいよね、でもこのビジネスが本当にうまく立ち上がるのか疑問でした。
既に、大手のクレジットカード会社が存在している以上、小口決済の市場をどう崩していくのだろうかと、半信半疑でした。
ところが、今やこのビジネスはかなりうまくいっているようで、iPadと連携した決済iOS6のPassbookを利用したギフトカードを送れるサービスにも展開しています。

さて、3年後のジャック・ドーシーはどんな姿になっているかというと、今年の9月に開催されたTechCrunchDisruptカンファレンスのキーノートでのビデオがあります。

何か全然違いますね。こちらのビデオで受ける印象は、堂々としていて、この人物なら世の中を変革してくれるな、と思わせます。
思うに、どうも日本人は(というか自分自身もそうですが)、枠にとらわれすぎるのではないでしょうか。
既に存在するシステムを前提に、新しいビジネスモデルを考えてしまう傾向があるのではないでしょうか。

Squareを立ち上げた時にジャック・ドーシーは思ったはずです。モバイルで小口決済ができたらどんなに便利かと。その前には巨大なクレジットカード会社が立ちはだかっていたとしても、世の中を変えることができる道があると、強く思ったはずです。
TechCrunchDisruptカンファレンスのビデオの中でも、ジャック・ドーシーは繰り返しレボリューションという言葉を繰り返します。
"revolution has values,revolution has purpose ,revolution has direction,inivation has leaders."

ジャック・ドーシーの頭の中は、世の中を変えることが当たり前であるということが前提となっているのではないでしょうか。

スピーチの中で、SF作家のウィリアム・ギブソンの言葉が取り上げられていました。
その言葉とは、
"The future has already arrived.It's just not every distributed yet."
です。

この言葉は、海外(英語圏)でははよく引用しされるのでしょうか。
最近読んだ、WORKSHFTの中でも引用されていました。
WORKSHIFTでは、以下のように訳しています。
"未来はすでに訪れている。ただし、あらゆる場に等しく訪れている訳ではない。"

おいらの思いも込めてもうすこし意訳すると、
"未来は既にここにある。でも、目を凝らしてみないとわからない。"

そうなのです、未来は身近なところにすでに現れているのですが、それに気づく必要があります。未来を変えるアイデアは、身近なところに存在しています。

Squareのアイデアも身近にある何でもないことからでした。
ジャック・ドーシーがSquareのアイデアを思いつエピソードは、MAKERSの中に詳細に書かれています。
共同創業者となる元ガラス職人のジム・マッケルビーがガラス作品を販売する際に、購入希望者がアメリカン・エキスプレスしか持っていなかった為に販売できなかったという、どこにでもありそうな話です。
二人は、この体験から、決済に革命を起こすことを思いつきます。
(MAKERSでは、ものづくりという観点から、マッケルビーに焦点をあてています。)

さて、このSquareという会社は今後とも注目ですね。また、ジャック・ドーシーという人物にも注目です。

ソースシャルネットワークはどう進化するのか。

『ウェブはグループで進化する』、をだいぶ前に読了していたのだが、自分自身がそれほどFacebookを利用しているわけでもないので、どう感想を書こうかと迷っていたのだが、最近になり、やっとソースシャルネットワークの楽しさの一部が分かってきた。
というわけで、『ウェブはグループで進化する』の感想を書く次第です。

ウェブはグループで進化する

ウェブはグループで進化する

著者のポール・アダムス氏は、ダイソン、Googleフェイスブックと言った一流の企業に身を起き、いまではフェイスブックのブランドデザイン部門のグローバル責任者を任されています。Googleでは、あのGoogle+の開発に携わっていました。
この経歴をベースに、本著は非常に示唆に富んだ内容となっています。

本著は、冒頭から刺激的な言葉で始まります。その言葉とは、"世界が変わろうとしている"です。
この変わろうとしている、新しい世界を築いている4つの変化をあげています。
第1の変化は、アククセス可能な情報の急増です。
第2の変化は、ウェブの構造変化です。コンテンツ中心型から人中心型へ変化しようとしています。
第3の変化は、人間関係を正確に把握し分析することが可能になったことです。
第4の変化は、人の意思決定に関する研究が進歩していることです。

本著は、この4つの変化を視野に置きながら展開していきます。
以下各章ごとのポイントと感想を述べていきます。

■第1章 変化するウェブ
この章では、
"ウェブは人を中心にした構造へと変わりつつある。"
ことが説かれています。
ウェブ自体は、爆発的な情報量をもとに進化が加速していますが、一方リアルな人間社会に目を向けてみると、
"人間の行動が変化するスピードは、技術の変化より非常に緩やか"
であり、
"現代のコミュニケーション技術を使えば、何千人といった人々とつながることができるにもかかわらず、人々は、ごく少数の親しい人々と付き合うというスタイルを維持している。"
状況です。
このような状況のもと、
"ウェブは、ますますオフラインの世界の姿に近づいていく。"
のです。

"変化するウェブ"を考えるに、 今後、人間の行動原理を知ることがますます重要になっていくのではないでしょか。

■第2章 人々がコミュニケーションをとる理由と方法
この章は、非常に興味深いです。
人々は、なぜコミュニケーションをとるのでしょうか?
それは、
"人々が会話するのは、情報共有によって生活が楽になるからだ。"
です。
なるほど、そうですね。会話を通して、自分の知らない情報取得によって、生活する上でのリスク回避が優位になるのです。
目的をもって情報収集するための会話もあれば、他愛のない会話から思いもかけない情報をえることもあります。全ての会話が、情報を得るためとは限りませんが、会話の中に、情報共有という要素が常に潜んでいるのです。

会話の中でさらに重要なポイントは、
"人々は、事実をシェアするのではなく、感情をシェアしている。"
ということです。
事実は当然のことながらシェアされるのですが、事実のみみをシェアするのではなくて、事実を感情でシェアするのです。感情に包まれた事実を、シェアし伝達するのです。これは、感情による伝達度の方が大きいということです。感情をプラスすることによって、事実の伝達度が増すということです。

■第3章 ソースシャルネットワークの構造が与える影響
なぜ、これほどまでにソーシャルネットワークがはやるのでしょうか。
それは、
"人は、生まれたときからソースシャルネットワークの一部である。"
からです。なるほど、そうですね。
それと、
"ソースシャルネットワークは成長する。
のです。時を経る過程で変化し、移り住む地域によっても変化していきます。

この章では、"本著での最も重要な主張"が展開してされます。
"「ソースシャルネットワークは独立したグループが結びついて形成されている」"
のです。
"グループは、成長の段階、共通の体験、共通の趣味を通じて形成される。"
のですが、
"人は、誰とつながるかを決めることができるが、つながった相手が誰とつながるかは決められない。"
のです。
"ただ、遠くつながった相手からも影響を受けることがある。"
ということです。

著者は現実世界のつながりをこのように述べているわけですが、たとえば、Facebookを見た場合、このようなつながりが形成されているかというと、まだそうではないと思われます。
おいらがFacebookを始めたのは、海外にいる親族からの友達リクエストがきっかけです。それから友達は増やしていますが、結局は何らかに形で親族と関係がある人たちだけと"友達"になっています。
社会におけるつながりは親族以外もあるわけですが、"親族つながり"になっている状況で、他のつながりをもつ人々と新たなつながりをFacebookの中で持つのは、かなり抵抗感があります。
本著でも述べられていますが、人間のつながりにはグループが存在します。
当然家族のつながりもあるし、大学や会社、共通の趣味や共通の体験でつながる場合もあります。また、住んでいたそれぞれの地域でのつながりもあるでしょう。
いまのFacebookだと、各グループのつながりが一緒くたになってしまいます。それに、強い絆や弱い絆は全く考慮されません。"友達"でつながっている全員に対して、Facebookに投稿された情報は、平等に瞬時に伝達されます。
もし、Facebookが、この不安や抵抗感を解決してくれるツールを提供してくれたら、Facebookは最強のプラットフォームになるのではないでしょうか。(いまでも最強かもしれませんが・・・)

Google+のコンセプト設計に携わり、いまFacebookに在職している著者に、期待するところ大です。

■第4章 人間関係が与える影響
この章では、人間関係のタイプとして、
"知り合い。情報源。遊び友達。協力者。仲間。癒し手。相談相手。親友。"
といった例をあげています。そして、当然のことながら、それぞれのタイプから受ける影響はことなります。
それぞれのタイプは、
"強い絆、弱い絆。"
でむすばれていますが、面白いことに、
"強い絆の影響は大きいが、弱い絆は重要な情報源。"
になるということです。
強い絆は、影響力が大きいのですが、多様な情報源とはなりません。
関係が濃密であるがゆえに、選択肢が狭まる可能性があります。
弱い絆は、影響力は小さいが、多様な情報源となりうる可能性があるのです。

■第5章 インフルエンサーという神話
この章では、マルコム・グラッドウェル氏が唱えた"インフルエンサー"とい概念に疑問を投げかけています。
本著では、次のように述べています。
"「つながりが多い」と「影響力が大きい」は、イコールでない。"
のである。
"情報が伝わるには、人々が影響を受けやすい状態であることが必要。"
である。
"人々の心理的なハードルが下がったときに、情報の拡散が起きる。"
のだ。

ふむふむ、この説も正しいような気がします。
影響力がある人でも、受けて側が何ら興味を持たない段階では情報の拡散は発生しないでしょう。受けて側に情報を受け入れる素地ができあがり、スレッシュホールドを越えやすい状況になって、
一気に情報の拡散が発生するのです。

第6章から第8章 は、"周囲の環境が与える影響"、" 脳が与える影響"、 "先入観が与える影響"と続きます。
これらの章は、人間行動学として、別に一冊の本を読んだ方がいいかもしれません。
キーセンテンスだけ抜き出しておきます。
・自分に似た人の行動をまねようとする。
・過去に起きた行動からも影響を受ける。
・所属する社会から影響を受ける。
・社会規範から影響を受ける。
・人間の行動の大部分は無意識のうちに起きる。
・脳は、細かい部分ではなく、物事と物事との関係性を記憶してる。

最後のセンテンスは、本著とはあまり関係ないかもしれませんが、人間の脳の記憶構造の本質をついているかもしれません。

■第9章 ソーシャルウェブにおけるマーケティングと広告
これからは、”妨害型マーケティング”ではなく、”許容型マーケティング”だと言っています。
「いいね!」ボタンは、許容型マーケティングであるとしています。
また、ソーシャルメディアが重要なのは、口コミを計測可能なものへと変えたことだ、と言っています。

人間の行動を計測可能にした、ということがかなり重要です。
計測可能となることにより、分析ができるからです。

”広告”という観点からすると、FacebookGoogleに比べポテンシャルがあるものの、マネタイズがうまくできていません。
最近こんな記事がありました。
消費者が購入を決定する要因は、最後のクリックで決定されるわけではなく、それ以前に消費者にインプットされて
いる情報提供の方が重要であるという主張です。これは一理あります。人間の行動原理からしても理がかなっています。
Facebookは何をしたかというと、Facebookの広告を見た人がその後何を購入したかを追跡できるようにしたのです。
その追跡調査の結果判明したのは、商品を購入した87%の人がFacebookの広告を見ていたとうものです。
これは重要です。おそらく多くの人は、最後のクリックが決めてではないんだよね、と薄々思いつつもうまく証明
できない。Facebookはそれを証明したのです。これは、人間の行動が計測可能になったからです。

さて、第10章 では、”結論”として、本著のポイントが簡単にまとめられています。

ビットからアトムへ

クリス・アンダーソン著"MAKERS"を読了しました。

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

久しぶりに興奮して読めた著作です。
本を取る前は、3Dプリンターのことが主体的に書かれているのかと思っていましたが、違います。
これから訪れるであろう製造業の未来が描かれています。
クリス・アンダーソン氏は、"FREE"の著作で一世を風靡しましたが、本著を読むと、"FREE"は単なる序章であったことがわかります。
"FREE"は、現実世界の情報をインターネットというインフラに蓄積することによって実現した世界です。
情報のインプットにより構築された世界です。
"MAKERS"は、インターネットに蓄積された情報を現実世界の現物にアウトプットさせる世界です。
"FREE"+"AKERS"によって、インターネットの世界と現実世界が連結したと言えるでしょう。
本著では、これを”ビットからアトムへ”と称しています。

冒頭にこう書かれています。
"マルクスの言葉どうり、製造手段を支配する者が、権力をもつのだ。"
"FREE"では、"情報"を万人に解放しました。"MAKERS"では、"製造手段"を万人に解放するのです。
これだけでも、どきどきしてしまいますね。

本著では、クリス・アンダーソン氏自身が立ち上げたベンチャーが、成長して行く過程が描かれています。
この過程を読むと、クリス・アンダーソン氏は、インターネットの特質をうまく利用していることが分かります。
クリス・アンダーソン氏は、航空ロボットビジネスを立ち上げる際に、コミュニティを立ち上げます。コミュニティでは、設計データをオープン化します。
このオープン化というのが非常に重要で、本著では、"オープンソース化するだけで、僕たちは無料の研究開発機能を手に入れた。"と書かれています。
また、このオープンソース化に対する報酬形態も重要で、本著では、"ピラミッド型のご褒美"を提案しています。
これもうまいですね。コミュニティに集積された設計データを利用して、うまくビジネスがいった場合の報酬を貢献度に応じて報酬に段階を設けるというものです。下はTシャツから、上は株式まであります。
これだったら、コミュニティに参加しているメンバーも納得するのではないでしょうか。
同じようなビジネスを立ち上げる際には、参考になりますね。

オープン化については、さらに重要なことが語られています。
クリス・アンダーソン氏は、「ビル・ジョイの法則」を引用します。「ビル・ジョイの法則」とは、サン・マイクロシステムズの共同創業者であるビル・ジョイの言葉です。おいらも初めて知りましたが、次のような言葉です。
『いちばん優秀な奴らはたいていよそにいる』
これは、何を意味しているかというと、"取引コストの最小化を優先すると、もっとも優秀な人材とは一緒に仕事ができない"ということです。
ここに、企業組織の矛盾と限界があります。
企業の形態を取る限る、企業は応募した人材しか採用できないのです。
逆に、オープンなコミュニティは、全世界の人材が参加することができるのです。
オープンなコミュニティを作ることが、かなり重要だってことですね。

本著では、中国の模造品製造業者のことも書かれています。
ちょっと面白いのは、模造品製造業者がオープンソースの組織構造と似通っていると指摘している点です。
確かに、中国って模造品を瞬時に生み出しますよね。ちょっとしたウワサや、正規品が発売される前や直後に似たような製品を市場に流通させますよね。
困ったもんだと思いながらも、何であんなに簡単に素早く物を作れるのか不思議でした。本著を読んで謎が解けました。
模造業者間でオープンに情報を共有して、小規模であるがゆえに効率的な小規模生産ができる生態系ができあがっており、固定費を最低限に抑えて、市場に素早く製品を投入しているのです。
本著では、この模造業者のモデルと「軽量イノベーション」のモデルが共通しており、ポイントを以下のように抽出しています。
・ネットワークに参加する。
・問題解決者に報いる。
・とことん解放する。
・先手を打つ。
こう見てくると、中国の製造業者も侮れないところがあります。

本著のエピローグは、"製造業の未来"と題されています。
クリス・アンダーソン氏が予想する未来は二つのパターンです。
一つ目は、"参入障壁が低く、イノベーションは速く、起業家精神の高いモデル。"
二つ目は、"商売っ気がなく、まったく儲ける気のない素人がコンテンツの大半を作る世界。"
二番目はかなり辛辣な意見です。クリス・アンダーソン氏は、今のインターネットの状況にまだまだ満足していないようです。
クリス・アンダーソン氏が望むのは、一番目の世界です。
本著では、"僕なら、一番目のモデルに賭ける。"と書いています。
おいらも、一番目のモデルに賭けます。

最近思うに、大企業だかと言って、常にイノベーションをおこすことができるわけではなく、ごく一部の大企業しかイノベーションをおこすことができないのではないでしょうか。
特に、日本の大企業はイノベーションを起こすのは難しいでしょう。日本の大企業は国内インフラの受注に精を出すのではないでしょうか。
これからは、小回りのきく、中小企業群が活躍すべき時代と思います。また、そこから多くのイノベーションが生まれるべきと考えています。