Appleのデザインがもたらす秘密

『アップルのデザイン』読了。

アップルのデザイン

アップルのデザイン

Appleの製品戦略について、"デザイン"の観点から論じている。
この本から、Appleがデザインに対しどれほどこだわっているかが分かる。
また、Appleのデザイン戦略は、この本の冒頭に端的に記されている。
その戦略とは、"デザイン"を中心とし、"デザイン"が、"サービス・ソフトウェア"、"インターフェース"、"製品"、"パッケージ"、"店舗"、"広告"、"製品発表会"を一貫したつながりにまとめあげているのだ。

前半は、Appleのものづくりに対するこだわりが書かれている。
iPhoneiPadiPod Shuffleを分解し、そのこだわりを解説している。ものづくりにたずさわっている方には、興味深い内容だろう。

ちょっと古いが、ジョナサン・アイブのインタビュー記事も掲載されている。
iMacのコンセプトは、"懐かしいけど未来的なもの"なのですね。
それと、把手があるのは、"プロダクトと人との間に身体的なつながりを生じさせる"ためだったのですね。
この"身体的なつながり"がApple製品に親近感(そばにおいて、いつもいじってみたいという欲求)を覚える秘密なのでしょう。

本書後半では、Samsungとのデザインに関する特許闘争も解説されており、その論点がどの様なものであるか理解しやすく書かれています。
こに中で、381特許の重要性についても触れられています。
381特許とは、タッチスクリーンを操作するインターフェースで、写真やドキュメントをめくっていき最後の画面になった場合、さらにスクロールさせようとすると余白が表示され、タッチを離すとスルッと余白が消えて画面がもとの位置に戻る、あのインターフェースです。
これて何気なく使われいますが、操作する体感からすると非常にわかりやすく、小気味良いインターフェースです。
特許闘争では、この381特許は認められ、Samusng(Android陣営)は、このインターフェースは使用しないようにソフトウェアをアップデート(ダウングレード)したんですね。

こに本の最後の方では、AppleTVのインターフェースについても触れられています。
Appleが申請した特許から、今後のAppleTVのUIを予見しています。
Appleが申請した特許は、リモコンとジェスチャー入力を上手く組み合わせており、非常に興味深いものです。これも、リモコンと"身体的つながり"を上手に組み合わせたもにとなっています。

本書では、ショートインタビューが多数掲載されています。この中で、猪子寿之氏のインタビューに、的を射た発言箇所があります。
ちょっと本書から引用します。
『グーグルとい会社はインフラをつくることが主眼で、基本的に「何かをデザインする」ということはありません。
それに対し、アップルは末端まですべてデザインしてくれるから、彼らがどのような未来を描きたいのかがダイレクトに伝わってきます。』

このダイレクトに伝わってくるということ、すなわち"身体的なつながり"により、Apple製品を手に取ると、未来を具体的に体感できるということなのですね。
ここに、Apple製品を手にとっていると至福の気持ちになれる秘密がありそうです。
Appleの製品は、未来を具体的に体感できるプロダクトなのです。