政府は必ず嘘をつく

堤未果さんの"政府は必ず嘘をつく−アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること"を読んだ。


堤さんの著作と言えば、"ルポ貧困大陸アメリカ"に衝撃を受けた記憶がある。"アメリカ"と言えば、"世界一富んだ国"といった印象をずっと持ち続けていたが、その先入観が覆された。高額な医療費、ビジネス化する戦争、高騰する教育費に翻弄される学生たち、カードの支払い能力が無くなった者や貧困層は軍への入隊を勧誘される。正に、アメリカは貧困大陸となり、その現実が他人事ではなくなることに警鐘を鳴らした著作であった。

本著も、その内容が凄まじい。

今回の"政府は必ず嘘をつく"は、9.11以降米国政府がとった国民に対する対応と、3.11以降日本の政府がとった国民に対する対応とが同じものであることをえぐり出している。
また、現在の米国政府がとっている国家戦略は、グローバリゼーションや自由貿易や民営化による効率化の名のもとによる、多国籍企業の国家支配であることが、本著から読み取れる。

9.11の"テロ"と3.11の震災による福島原発事故は、事象としては異なるが、その後の政府のとった行動は同一の原理に基づいている。それは、企業と政府(官僚)の癒着だ。
9.11以降米国はイラク戦争に突き進む。フセインは処刑されたが、イラクは混乱したままだ。
昨年オサマ・ビン・ラディンも殺害れた。でもテロは続いている。そもそもオサマ・ビン・ラディンは存在していたのだろうか?おいらたちが、目にしたのは、ビデオ撮影された姿だけだ。
そして、リビアカダフィ大佐も殺害された。本著では、リビアが人々の思う程劣悪な国家ではなかったと書かれいる。カダフィ大佐は、"全ての国民にとって、家を持つことは人権だと考え"それを実行していた。おいらたちが思い描き、メディアから流される"独裁者"とは程遠い。それに、シリアのアサド政権に対する状況も同じだ。
資源のある国家を独裁国家にみたて、国家を崩壊させ、その後米国の多国籍企業が進出する、といったパターンなのだ。
この凄まじい戦略は、他国のみならず米国内にも向けられている。ターゲットは教育現場の公務員達だ。
多国籍企業の支配は、他国のみならず、米国自身にも及んでいるのだ。

本著では、TPPにも警鐘を鳴らしている。
TPPというと、関税の全廃や農産物の自由貿易化による影響がよく取りざたされるが、TPPの真の目的は、ここにないことがわかる。
特に驚いたのは、他国の企業が通商先の政府を訴えることができるというISD条項だ。例えば、米国の企業は、知的財産権を盾に、ジェネリック薬品の製造を許可している日本政府を訴えることができるのだ。
国民の医療を守るための政策が、他国の企業から訴えられるという、何とも理不尽な状況が発生するのである。
なに、訴えられても勝訴すればいいではないか、という意見もあろうが、このISD条項は、NEFTAにも採用されており、これに加盟しているカナダ、メキシコは米国からの訴えに対し全て敗訴。米国もカナダ、メキシコから訴えられているが、全て勝訴なのである。

いまや、国家の仮面を被った資本主義が暴走しているのだ。

そんな世界の中で、おいらたちはどうすればいいのか。
本著では、"歪んだ価値観"を見直し、"ひとつの情報を鵜呑みにせず"、"自分自身で結論を出すことだ。"と結んでいる。

今や世界には情報が溢れている。おいらたちは、インターネットといツールに振り回されるのではなく、そのツールを駆使し、情報の価値と意味を判断し、自身のネットワークを拡大し、自ら世の中を変えていく姿勢が求められているのではないだろうか。