Publicness(パブリックネス)

明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。

さて、今年の第一弾は、ジェフ・ジャービス氏の"PUBLIC(パブリック)"だ。今の時勢ににふさわしい本だ。手応えのある一冊である。

パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ

パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ

■ パブリックとプライバシー
本著では、まずプライバシーとは何かの問いかけから始まる。
おいらが思うに、一般的に、パブリックとプライバシーは対極にあり、プライバシーは保護される権利があるものと理解されているが、もしかするとそれは間違いなのかもしれない。
パブリックとプライバシーは対極にあるあるのではなく、全く異なる次元のものか、全く同一線上にあるものなのではないだろうか。
プライバシーは、社会的、文化的な側面から意識付されたものだ。プライバシーの定義、受け止め方は個々人でも異なるし国や文化によっても異なる。
本著でも冒頭ドイツ人の例が書かれている。Googleストリートビューに対応するドイツ人の感覚は、日本人からみても何故そこまで忌み嫌うのか分からない部分もある。
プライバシーは完璧主義の裏返しの一面もある。おいらも完璧な人間ではないし、恥ずかしい行動をとることもある。仮にそれが公にされた時に感じるのは、社会が自分をどのような目で捉えなおすのかと言った恐れにも似た感覚である。何故恐れるのか。それが、完璧な行為ではないからだ。
プライバシーは、社会的文化的な側面から生み出されるものと、完璧主義から生み出される側面がある。ただそれは、いずれも人間が生み出した感情的な規制みたいなもので、人間本来の姿を覆い隠してしまうものなのではないだろうか。
本著を読んでいると、プライバシーって何だろうかと、絶えず自問している自分に気付かされるのである。

■ パブリックのメリット
パブリックと唱えると、いやプライバシーの保護が優先だと言われがちだが、本著ではパブリック(パブリックネス)のメリットを数々あげている。
実例は本著を読んでいただくとして、表題をおってみよう。パブリックのメリットが簡潔にまとめられており分かりやすい。
"つながりが築かれる"、"他人が他人でなくなる"、"コラボレーションが生まれる"、"集合知(と寛容さ)を解き放つ"、"完全神話が払しょくされる"、"名声が得られる・・・か、少なくとも認知される"、"組織する"、"僕らを守ってくれる"

端的いうと、パブリックとはプラットフォームなのである。
パブリックの上に人々が人々の為の価値を構築していくのだ。
そして、パブリックが人間本来の姿であり、人々を拘束から解放してくれるのである。

■ グーテンベルクとインターネット
今のインターネットの時代は、ちょうどグーテンベルクが印刷技術を発明し、社会的文化的なインパクトを人間社会に与えた時代と同じなのだ。
印刷技術によって、
・知の解放
・知の集積
・知の流通
がもたらされた。この3点は今のインターネットの時代にも当てはまり、かつ加速されている。
また、インターネットの時代では、これに双方向性が追加される。
そして、何よりも異なるのは、印刷技術によりもたらされた変革が、個人の手で実行可能と言うことだ。
印刷技術がもたらした変革の延長線上には、マスメディアが存在する。特に、知の流通には資本が必要だ。資本をベースとした、大量の一方的な知の流通がマスメディアなのである。
本著では、マス・メディアとパブリック・メディアをうまく対比させている。
マス・メディアは、意見を言う側が圧倒手に少ない、個人がマスに言い返すのは容易でない、意見が実現されたかどうかは不透明、さまざまな機関からの自立性がない。
パブリック・メディアは、すべてこれを覆してくれるのだ。

そして、インターネットによる社会の変革はまだまだこれからなのだ。
本著を読んでいくと、"インターネット=パブリック"と思えて仕方ない。
インターネットは国家を越え国境を越えるプラットフォームなのである。

■ これからの時代
今は、真のインターネット大航海時代の突入時期なのだ。
最近思うに、先日のブログでIBMの今後5年後の未来予測を紹介したが、技術の中心が人間に移りつつあることを感じる。
例えば、"People power will come to life"のビデオでは、人間の活動をエネルギー源とするビジョンも読み取れる。
2番目の、"You will never need a password again"は、生体認証であり、正に人間そのものをパスワードとするものだ。
3番目の、"Mind reading is no longer science fiction"は、人間の思考を読み取り、人間の思考(=脳の活動)のみで、外部をコントロールする。従来は、筋肉の延長として道具や機械が存在していたが、脳の思考で全てをコントロールしようとするものだ。
4番目の"The digital divide will ceace to exit"は、mobile deviceによって、世界中の人々がつながり合うこと意味している。個々人が、インターネットでつながりあってしまう時代が到来するのだ。
5番目の、"Junk mail will become priority mail"は、4番目とも関連するが、つながりあった人々に有効な情報を提供することの重要性を説いている。
一方個々人の行動が全世界と同期する可能性をも秘めているのだ。
個々人にとってなんでもない情報が、国を越え国境を越えて、きっかけがあれば全世界の人々と同期し、世界を動かしてしまう可能性を秘めているのである。
この可能性をより高めるのが、パブリックネスなのではないだろうか。