Steve Jobsの真髄

結局、Steve Jobsの真髄は、本質を見極めることに長けていた、ということに尽きるのだろう。

興味深い記事がある。
Guardianに投稿された、Stephen Wolfram氏の一文だ。
Stephen Wolfram氏がSteve Jobsに会ったのは25年も前のことだ。ちょうど、JobsがAppleをいっとき去り、NeXT社を立ち上げていた時だ。その頃、Stephen Wolfram氏は、Mathematicaの最初バージョンに取り掛かっていた。
Mathematicaは、Jobsが新たに開発するコンピュータに取り込みたいソフトウェアでもあった。JobsはMathematicaに強く魅かれてもいた。

そんなStephen Wolfram氏が、Jobsに感服するのは次の様な点だ。

One of the things I always admired about Steve Jobs was his clarity of thought. Time and again, he would take a complex situation, understand its essence and use that understanding to make a bold and unexpected move.
Jobs凄いのは、思考が明確なことだ。幾度となく、Jobsは複雑な状況に置かれた。それでも、本質を理解し、理解した結果が大胆で予想外の行動になるのだ。

Stephen Wolfram氏は、この大胆で予想外の行動が現れた、Jobsの人間的な側面のエピソードとして、テクノロジー戦略の会合をJobsがすっぽかした事件(妻であるローリーンとのデートを優先した)をあげている。この辺は微笑ましいエピソードだ。
そしてSiriの登場は、この本質を見極めるという結果の産物なのだ。
人々は、自分の電話を利用して直接"知識"にアクセスしたいのである。いく段もの手順を踏みたくないのである。この結果が、Siriなのだ。
ちなみに、このMathematicaはSiriにも利用されている。

JobsがMathematicaに興味を持っていたことは、この記事を読んで知った。
Mathematicaとは、複雑系を描写するプログラミング言語だ。
MathematicaにJobsが興味を示していた、という箇所を読んで、ふと頭をよぎったのは、Jobsがカリグラフィーに興味を魅かれていたことだ。
カリグラフィーを見て分かることは、ベースはテキストであるが、
表現はアートに近い。またその造形は生物的であり、植物の紋様を思い浮かばせる。見た目は複雑さを帯びているが、本質はテキストなのである。
Mathematicaも描く世界は複雑系であるが、本質はMathematicaのコードである。
一見複雑な様相も、その本質は単純である、ということだ。

Mathematicaとカリグラフィーは異なる世界のように見えるが、Jobsの思考の中では、同じ本質で繋がっていたのではないだろうか。