文明とエネルギー
養老孟司さんの"ぼちぼち結論"を読んだ。
- 作者: 養老孟司
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/06/23
- メディア: 文庫
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本著も、"バカの壁"の視点から世間の出来事を上手く切り取って見せている。
気になったのは、養老孟司さんの発想方がどの様にして生まれてきたかだ。
まず、終戦を体験していることだ。終戦を境とした思想の断層というか思想の逆転を身を持って体験している。
終戦後以降に生まれた世代は、恐らくこの思想の断層や思想の逆転を体験していない。
いろいろな事件があるものの、世間というものが継続して存在している。世間の常識というものが、継続して存在しており、ある日を境に世界観が一変してしまうことはなかった。この継続的な安定性が、逆に思考の壁(=バカの壁)を生むわけだ。
(注:但し、東日本大震災は、この思考の壁を突き崩した。原発問題もあり、恐らく多くの方々は、今までの生活スタイルを見直し始めているのではないだろうか。)
養老孟司さんは、常識とは、人間の脳が作り上げた壁であることを、終戦を通して子供心ながら、強く思ったのではないだろうか。
次は、虫取りが趣味であること。虫取りを通じて生物の多様性というか、生物の連続性を身を持って感じているからだ。
この生物の連続性に、脳は分類という断片化をもたらす。この分類というものが、便宜的な色分けであることを、養老孟司さんは、身を持って知っているのだ。
本著でも、梅田望夫氏の『ウェブ進化論』の感想を述べている箇所があり、ロングテールは理解しやすいと書いている。何故なら、虫の世界がロングテールだからだ。
さて本著の内容に戻る。
なるほど、と思ったのは、アメリカの反映というものが石油の消費に支えられている、という指摘だ。アメリカ文明とは石油文明でもあるのだ。この視点から見ると、アメリカ国家の行動が理解されやすい。
本文には、書評が3点掲載されている。その一つに、『不都合な真実』があり、バックボーンとして書かれていない事の方が重要であると説いている。
この、"書かれていないこと"を読み解くべきであるとうい指摘も重要ですね。書かれていないことに、多くの真実があるということですね。ここでも、アメリカ文明が石油文明である事を指摘している。
エネルギーがいずれ払底することを、本著ではずーと指摘し続けている。この辺は、慧眼です。
確かに、今回の原発問題を通じて、エネルギー問題が実は日々の生活の中に内在していたことを、われわれは思い知らされたわけである。