20歳のときに知っておきたかったこと。

"20歳のときに知っておきたかったこと"の紹介です。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 作者: ティナ・シーリグ,Tina Seelig,高遠裕子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: ハードカバー
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スタンフォード大学アントレプレナー・センター エグゼクティブ・ディレクターであるティナ・シーリング(Tina Seeling)女史の著作です。
ベストセラーになっていますね。NHKの教育テレビでも、授業の内容が放映されていました。

本著は、ティナさんが自分の息子が二十歳になったときのプレゼントとしても書かれています。
その為か、とにかく全編ポジティブな姿勢が貫かれています。教育テレビの番組を見らてた方も多いと思いますが、テレビでの熱血ぶりが、行間から伝わってきます。

全編から読み取れるポイントは、3つあります。
・常識にとらわれない
視点を変える。悪いアイデアでもちょっとひとひねりすれば、ベストのアイデアに変身します。
・チャンスはどこにでもある
身近なところに問題はいくつでもころがっている。それを解決する方法は、必ずある。
・自分を閉ざすことをしない
可能性は、いたるところで生じている。壁を作って、可能性を閉ざすことはない。
です。

冒頭、大学での演習の成果のポイントを3つあげています。
・チャンスは無限にある。
・いまある資源を使って、問題を解決する独創的な方法はつねに存在する
・問題を狭く捉えすぎる。ブラインドをあげれば、可能性に満ちた世界が広がっている

本著では、このポイントに沿って、いくつかのビジネスの事例と、授業での事例があげられています。
本文では、以外とさらっと書かれている箇所もあるのですが、読み終わって整理し直してみると、意外と奥が深いです。
たくさんの事例が書かれていますが、おいらが気になった事例をあげてみます。
(ここでは書きませんが、授業の事例の中で、パンク修理やレストラン待ちやプレゼン売ります、も秀逸です。)

① キンバリークラーク社の例
紙オムツといえば、パンパースですが、キンバリークラーク社も同様に紙オムツを販売していました。ただ、販売は芳しくありませんでした。この原因は、紙オムツを汚いもの、という視点で販売していたのです。それと、紙オムツに対する親達の思いは、「まだオムツが取れないの?」と聞かれることを非常に嫌っていることでした。紙オムツに対しネガティブな思いがありました。その視点をがらっと変えることにしたのです。オムツを「だめなこと」の象徴ではなく、「できること」の象徴に変えたのです。自分ではける「プルアップス」という、オムツとパンツの中間製品を商品化したのです。子供にも自分で履けるという自尊心を持たせることもできます。

オムツというネガティブな象徴を、自分で履けるオムツというポジティブな象徴に変えたことがポイントです。

② シルクドソレイユの例
まず、学生に『マルクス兄弟 珍サーカス』のビデオを見てもらい、伝統的なサーカスの特徴をあげてもらいます。例えば、「動物による曲芸」、「安いチケット」、「けたたましい音楽」とかです。次にこの特徴を逆にしてもらいます。「動物は登場しない」、「高額なチケット」、「洗練された音楽」とかです。最後に、伝統的なサーカスから残したいもの、変えたいものを選びます。
この結果は、シルクドソレイユ風のサーカスになります。

この手法は、いろいろと応用がききそうですね。
今までの常識の列挙。その反対を列挙。本当に欲しい物を組み合わせる。これで、新しいサービス(新しい価値)が生まれてしまいます。非常にシンプルな手法です。

③ 最善の案と最悪の案の例
課題の解決策として、最善の案と最悪の案を紙に書いて提出してもらいます。そして、なんと最善の案をシュレッダーにかけてしまいます。
次に最悪の案を練り直して最善の案にして下さい、と支持します。
これが、なんと不思議なことに、受講者は回ってきた紙を見てこれが全然駄目なアイデアではないことに気付きます。

これは、駄目だと思った状況が、視点を変えると全く駄目ではないということです。この視点の切り替えがポイントですね。

さて事例として、3点ほどピックアップしました。他にも多くの耳を傾けるべき事例がありますが、ここでは、他に気になったポイントだけをピックアップしてみます。

ルールについての言及があります。これは耳が痛いです。
ルールは破ってみる価値がある、ということです。戦闘機のパイロットの訓練生のエピソードです。ひとりは、「飛行の際のルールを1000個習った」といいましいた。すごいですね、1000ものルールを習ったのです。これだったら完璧でしょう。一方、「わたしが教えられたのは三つだけだ」というパイロットがいました。1000と3だったらどうみても1000の勝ちです。でもこの三つとは、「してはいけないことを、三つ教えられたんだ。あとは自分次第だそうだ」です。
これは、とにかく規則で縛ることが最善策ではなく、本質のところで守らなければならないことの徹底(本質は、数点しかありません。)こそが最善策であるということです。
ルールはルールを呼びます。ルールを守ることだけがルールになっていませんか?ルールを守ることが免罪符となっていませんか?

人間のタイプについての言及があります。
人間には、二つのタイプがあり、許可されるのを待っている人と、自分自身で許可する人たち、です。
これは、かなり極端な表現かもしれません。状況に応じては、"待ち"が必要なケースもあります。ただ、"待ち"だけでは全てが解決しないとういことです。

シリコンバレーの強さを端的に表現した文章があります。
シリコンバレーは、失敗はイノベーションのプロセスの一部として当然のこととして受け止められている。
ふ〜ん。これは日本には、もっともっと必要なことですね。ベンチャー企業を育成する土壌なり制度なりがもっともっと整備されるべきでしょう。
今の若い人は、ベンチャーの素質を秘めているのではないでしょか。

可能性の為に、何もかににも手を出すことは、勧めていません。人間が一度に遂行できるのは、3つまでである、と釘をさしてもいます。優先順位を決めろってことですね。
人間一度にできることには限りがあります。


さて、いろいろと書いてきました。本著は、200ページとちょっとの本です。それにもかかわらず、この本は読む人に多くの勇気を与えてくれるのではないでしょか。
それはまた、著者の生き方でもあります。