Apple Kingdomの誕生

AppleWWDC2011のKeyNoteSpeechを視聴して強く感じたのは、Appleが多くのライバル会社の数歩先を突き進んでいることであった。現状を考えるに、他のライバルメーカが追いつくのは極めて難しいであろう。そしてAppleは、Apple Kingdomの誕生に向け着々と足場を固めているということだ。
それでは、Appleの強みを分析してみる。

Appleの強みとは何か?
■ デバイス
まずHWの優位性。DeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhoneの全ての製品を提供しているメーカはいない。一部の日本メーカで、全ての製品を提供しているが、ワールドワイドの視点で考えると残念ながら太刀打ちできない。
IT系トップのHP、DELLでさえもDeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhoneに渡る全ての製品を提供していない。
Appleは、DeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhoneに渡るデバイスをワールドワイドで提供している唯一の会社なのである。

■ UI
Appleの製品で提供されるOSはOS XiOSである。
OS XiOSと呼び名は異なるが、この二つのOS間で統一されたユーザエクスペリエンスを提供することができるのだ。WWDC2011の発表をみれば分かるように、OS Xの次のバージョンであるLIONはiOSのUIであるマルチタッチジェスチャーやアプリのフルスクリーン表示等を取り込んでいるし、iOS5でもOS X版のSafariにあったReader機能を取り込んでいる。OS XiOSが相互乗り入れしているのだ。
Appleは、DeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhoneの全てのデバイスに対し、統一したUIを提供できる唯一の会社なのである。

■ デベロッパ
Appleは、デベロッパーの重要性を強く意識している会社だ。iMacMacBookを購入すれば、標準でXcodeの開発キットをインストールすることができる。これはすばらしいことだ。ユーザが思い立ったその日から、デベロッパーに変身できるのだ。MaciPhoneiPadの利用者が、自分でアプリを作りたいとおもった瞬間から、アプリの開発に着手することができてしまうのだ。それに、WWDCの発表にもあっが、iOSアプリ開発者に支払たお金は25億ドルにものぼる。
Appleほどデベロッパーの重要性を認識している会社はない。

■ アプリ
Appleはアプリの開発環境をユーザに標準的に提供し、さらにアプリの販売経路も提供してくれる。それも全世界に渡る販売経路を提供してくれるのだ。
最初はiPhoneのアプリのみであったが、今やiPadMac向けのアプリ流通網を提供してくれている。アプリの数も40万を越えている。これほど膨大なアプリを自社デバイス向けに提供できる会社は他にない。
Appleは、DeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhoneの全てのデバイスに対し、アプリを全世界に流通させるシステムを提供できる唯一の会社なのである。

■ アカウント
iTunesのアカウントは2億を越えた。この規模はどれくらいかというと、PayPal保有するアカウントと同程度だ。Appleはちょっとした決済サービス会社並のアカウントを保有しているのだ。
IT系の企業で2億ものアカウントを保有している企業は、他にない。
Appleは、自社のデバイス群を活かすためのアプリやコンテンツの決済を、2億を越えるユーザに対して自社で完結できる唯一の会社なのである。

■ 収入源
AppleGoogleが決定的に異なるのは、その収入源だ。Appleは自社デバイスから利益を生み出している。Googleはご存知のように広告収入が主だ。Googleが提供するサービスは、ほとんどのものが無料であるが、必然的に広告表示がなされる。iPhoneの無料アプリにも広告表示がされるが、これは開発者の収入源となるものであって、Appleの収入源には寄与しない。
Googleは、提供するサービスに広告収入に繋がる仕組みを組み込むことを常に意識せざるを得ないのだ。Appleは違う。自社の開発方針に沿ったデバイスを提供し、利益を得ているのだ。広告収入という第3者の意向に縛られることがない。Googleは米国内のインターネットの広告収入をほぼ独占しているが、今後とも磐石かというとそうでもない。Facebookがその座を狙っているから。
AppleGoogleと異なり、第3者の意向に対しても強い姿勢でのぞめる会社なのである。

■ クラウド
Mobile Meは散々であったが、iCloudはMobile Meの汚名を挽回してくれるだろう。
WWDCで発表されたiCloudのサービスは、非常に手堅いものであった。多くの人が期待してた、音楽のストリーミングは残念ながらサポートされていないが、最低ラインのサービスをサポートしている。
それと重要なのは、Appleの考えるクラウド化である。ジョブズ氏は、クラウドはストレージではない、と言い切っている。とにかく、何でもかんでもクラウドの中にぶち込めばいいものではない、というスタンスだ。
一番重要なのは、Sync(同期)である。いまや、多くの人が自分の生活スタイルに合わせて複数のデバイスを個人で持ったり、家族でもったりしている。このマルチデバイス間で利用するアプリやデータを同期することが大事なのだ。同期させることが、マルチデバイス間でシームレスな利用を実現することができる。
この発想は、逆に言うとマルチデバイス(DeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhone)を提供しているAppleだからこそ生まれた信念でもあるし、マルチデバイスを提供する上で、必要なことでもあった。
iCloudは単一のクラウドサービスではなく、Appleの提供するデバイス群を活かすための手段でもあるのだ。
iCloudによって、Appleの提供するデバイス群は、シームレスに利用出来ることが可能となった。
Appleは、DeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhoneの全てのデバイスに対し、シームレスな利用が可能な環境を提供できる唯一の会社なのである。


Apple Kingdomの誕生
Appleの強みは、DeskTopPC、NotePC、TabletPC、SmartPhoneのそれぞれのデバイスのUIを統一し、かつシームレスなユーザエクスペリエンスを可能としていることにある。さらに、アプリの開発とアプリの消費を循環させるエコシステムを構築したことにある。
ここにApple Kingdomが誕生する。
Apple Kingdomの住人になれば、最高のデジタルライフを満喫できるし、仕事の口も与えてもらえることができるのだ。

さて、話は変わり、Appleは2015年に向けて新し社屋の建設に踏み出した。Appleの本社があるクパチーノでは、新社屋建設に対する市議会による公聴会が開かれた。公聴会の席には、ジョブズ氏自らが立っている。ちょうどWWDCの翌日である。
公聴会ビデオは20分程度であるが、何となく和気あいあいとして微笑ましい。公聴会メンバーのおじさん(市長さんでした)も、いやー私もiPadをもっているんですよ。これいいよね、なんて言って自分のiPadを見せたりもして、さすがにこの場面では笑ってしまった。さらに、住人全員にWiFi環境を提供せよといったとんでもない要求もあり、ジョブズ氏もちょっと困った表情をしています。まー、税金を沢山収めるからこれで勘弁してよと言って難をのがれている。
この新社屋がまたとんでもなく凄いのだ。ジョブズ氏いわく、これはマザーシップだ。
マザーシップはこんな感じです。

ねっ、スゴイでしょう。
この新社屋ができたら是非見学したいものですね。旅行会社にはAppleツアーとか企画してもらって、この新社屋を訪ねてみたいものです。ちょうど、巡礼の旅のようにこの新社屋を訪れてみたいものです。
何となく、この新社屋がAppleの聖地になるよな気がして仕方ありません。