The Dailyは変革の起爆剤となるのか

2月2日に、The Dailyが発表された。The DailyはiPad専用のNews Mediaだ。The Dailyを生み出す為に投入された資金は3000万ドル。一週間にかかる運営費用は50万ドルだ。
The Dailyは新聞業界を変革することができるのであろうか。

まず、これからの時代に必要な、News Mediaとして期待すべきこととは何なのでしょうか。
いくつかのポイントをまとめてみました。

それでは、”The Daily”がこの期待すべきポイントをいくつクリアーできるのでしょうか。
まずは、”新しいビジネスモデルを提供しているか”ですが、価格帯と一週間単位での更新課金というモデルは、結構購入してもいいかな、と思わせてくれます。1週間99セントです。100円で購入できます。年間契約ですと39.99ドルです。4千円でお釣りがきます。ちょうど日本国内の新聞紙のひと月分で、一年間購読できますよってことです。この価格設定は非常に魅力的ですね。価格帯の設定が魅力的(画期的とまではいきませんが)ということで、”新しいビジネスモデルを提供しているか”というチェックポイントは、とりあえずクリアーしたといえます。

次に”インターネット時代に即しているか”ですが、残念ながらまだ不十分です。ソーシャルネットワークとの連携はあるのですが、クラウド的か、パーソナライズ的か、ライフログ的かはまだ不十分です。ソーシャルネットワークとの連携も現在の主流となっているソーシャルネットワークとの連携であり、新しいソーシャルネットワークを形成するものではありません。”インターネット時代に即しているか”というチェックポイントは残念ながらクリアーできていません。ただ、”The Daily”が成功し、ビジネスが成り立ち継続されるようになれば、”インターネット時代に即しているか”といったチェックポイントをクリアーしていくように、再び模索していくと予想されます。

”コンテンツ表現が革新的か”ですが、これはiPadをベースにしているということで、一応クリアーとします。マルチメディアに対する対応は十分でしょう。テキスト、写真はもちろん、ニュース番組を観るようなビデオ視聴も可能ですし、すべての記事ではないですが、記事の読み上げ機能(機械的な読み上げではなく、キャスターによる読み上げです。結構力を入れていまうすね。)があります。これだけサポートされているので、出来ればクラウド的なサポート(リビングではiPadで視聴して、移動中や外出先ではiPhoneで視聴したいですね。)も今後検討して欲しいですね。
タッチによるUIについてですが、タッチする行為は従来のパソコンと何が違っているのでしょうか。従来のパソコンは、パソコンにアクセスするために、KBやマウスやタッチパッドを使用していました。情報を表示する画面とは別の、分離されたデバイスからアクセスしていました。タッチによるUIは、情報を表示する画面に直接指で触れてアクセスします。この”直接指で触れてアクセス”する行為が、タッチUIの最大の特徴です。この特徴は、”情報に触れる”といった認識を脳にもたらします。この新しい感覚が、iPadiPhoneを爆発的に普及させた要因の一つでもあるのです。

”先導的なメディアであるか”の判断は、非常に難しいですね。そもそも”ジャーナリズム”とは何か、といった定義が定かではありません。”The Daily”の発表記者会見でマードック氏は、”すべてのひとのために”と言っています。このことから、生活に密着した、日々の生活の中で消費されるコンテツを目指していることがうかがえます。経済や国際政治といった専門的なニュースメディアは、すでにWSJウォール・ストリート・ジャーナル)がありますので、”The Daily”には、専門的なニュースは期待できないでしょう。リアルタイム的かというと、一応24時間体制で記事がアプデートされるので、仕組みは組み込まれているといっていいでしょう。大きなイベントや緊急ニュースは、Twitterによるリアルニュースの更新ページなどがあるといいですね。

さて、結局”The Daily”は成功するのでしょうか?ちんぷな答えですが、まずはそこそこ成功すると思われる。何と言っても、値段設定が魅力的だ。一週間で100円ぽっきりだ。それに年間にすれば4千円で十分なのだ。できれば、日本のiTunesからも簡単に購入できるようにして欲しいですね。英語の教材としても最適です。ニュースビデオを観て楽しめるし、記事の読み上げもありヒアリングも訓練できます。それにコンテンツの分量も十分すぎるほどあります。毎日100ページ程度のコンテンツが提供されます。
おそらく、”The Daily”の価格設定やコンテンツの見せ方や提供の仕方が、今後のニュースメディアのスタンダードになるのではないでしょうか。
ここで、はたと心配事が湧いてきました。果たして、日本のニュースメディアは、この流れについていけるのでしょうか。既存のニュースメディアが駄目であれば、新しいニュースメディアを立ち上げ、変革にのることが必要かもしれません。

最後に”TheDaily”に関する記事をあげておきます。
iPad Apps February 4th(TheDailyのデモビデオがあります。)
iPad 日刊紙 The Daily 正式発表、週 0.99ドル・年間 39.99ドルの定期購読(TheDailyの発表記事です。)
iPad 日刊紙 The Daily 質疑応答まとめ:ビジネスモデル、ライバル、今後の展開など(TheDaily発表会での質疑応答記事です。)
The Daily vs. Flipboard: One of These is The Future of Newspapers...(TheDailyとFlipboardの比較をしています。TheDailyにはパーソナライズ機能がない。あまねくある情報源からの選択ができない。まあ、それは仕方のないことですが。TheDailyは、現時点では、形態的に旧来の”与える情報”的なスタンスのままである。)
iPad新聞『The Daily』は成功するか(ここでも、Flipboardが引き合いに出されています。この記事に書かれている”Pulse"というアプリは、おいらも使っていますが、非常にいいアプリです。ユーザインターフェースが優れています。iPhone版もありますし、無料です。これオススメですね。20タイトルまでニュースソースが登録できます。)
iPad日刊紙「The Daily」創刊―Appleの狙いは何か?(コンテンツの表示形態が詳しく書かれています。)