スティーブ・ジョブズとはいかなる人物なのか。

スティーブ・ジョブズ失敗を勝利に変える底力”読了。竹内一正氏に著作である。ジョブズ本は数々あれど、本著はスティーブ・ジョブズの犯した”失敗”という切り口から、”ジョブズに学ぶ教訓”を導き出す構成となっています。

スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力 (PHPビジネス新書)

スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力 (PHPビジネス新書)

このアプローチは、なかなかユニークで、失敗談を通して”ジョブズ”とは何ものなのかをくっきりと浮かび上がらせています。
第一章は、スカリーによって会社を追い出されるエピソードが書かれています。これを読むと、ジョブズ側に会社から追い出されても仕方のない言動があり、当然の成り行きだったと思われます。(著書の中で書かれている内容を読むと、ジョブズがかなり暴走していたようだ。)だだAppleを追放されたことは、後から振り返ればジョブズ氏にとっては試練を与えられると同時に、次の飛躍へと誘う多くの経験をさせることになります。
第二章は、NeXTでの失敗が語られています。さっそうと登場した”ネクストキューブ”でしたが、あまりにも高価でした。またそのデザイン性も法人向けとしては、購入の訴追となる要因とはなりませんでした。端的にいうとマーケティングの失敗といえます。ジョブズも見誤ることがあったのですね。
ただ、NeXTではハードウェアのセールスには失敗したものの、将来Mac OS Xのベーシとなる”ネクストステップ”を手に入れます。これは、iPhoneでも採用されている、iOSへと繋がっていきます。
ジョブズは、転んでもただでは起き上がらない性格のようです。まー、かなりしぶとい神経の持ち主なのではないでしょうか。
第三章は、ジョブズ氏の”人間関係の失敗”を書いています。ネクストやピクサーやそれにAppleでの人間関係の軋轢が語られています。本文にありますが、”ジョブスは、部下との長期的な関係を築きにくい経営者である。”とまで言っています。確かに、過去の行動をみる限りそうなのかも知れません。
ただ、今のジョブズはどうでしょうか。この辺は、少し変化が現れているようにも思えます。
第三章で気になる指摘をしています。ジョブズの後継者は誰か、とういことです。これは非常に頭が痛いですね。確かに、いまのAppleの幹部の中で、ジョブズの後継となりえる人物がいるのか。仮に、外部からスカウトしたとしてもジョブズの後継となりうる人物がいるのか。
おそらくいないでしょう。
結局、本文にも書かれていますが、
”アップルの最大の強みはジョブズの存在であり、一方アップルの最大の弱みはこれまたジョブズの存在となる。”
ということになってしまいます。うーーん、非常に頭が痛いですね。
第四章では、交渉の失敗を取り上げています。あのジョブズでも、失敗することがあったのですね。
ここにもネクスト時代の失敗談が書かれています。ネクストキューブをディズニーの幹部に売り込みにいった時のことです。こんなことを言ってしまいました。”このコンピュータがあれば、誰でもディズニーのようにアニメーションが作れます。”この言葉がディズニー幹部の逆鱗に触れます。当然ですよね。

本著の中で語られるジョブズのエピソードを読んで、全体的に感じるジョブズの印象は、図々しさや自己中心的な色合いが強い。ただ底流にあるのは、恐ろしいほどの粘り強さである。
ジョブズとは、自分の世界観で外界をバリアーできる人物なのではないでしょうか。