グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

”グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた”を読んだ。いい本である。久しぶりに、一気に読みあげた。グーグル日本法人前社長でありSONYでもカンパニープレジデントを務めた、辻野晃一郎氏の、多くの思いの込められれた本である。

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

辻野氏の名前はこの本を手にして始めって知ったのだが、なかなか凄い人である。世の中の流れを読むのに長けた人である。”コクーン”のプロジェクトも、仮に中断されていなければ、SONYGoogle的な、今のインターネット時代にうまく適合していた企業になっていたかもしれない。
さて本著作の紹介に戻ります。
前半は、SONYでの苦悩の体験が語られています。後半は、Googleのことそしてクラウドについて、最後は日本の企業というより日本をこれから背負って立とうとする人々へのメッセージで締めくくられている。
SONYでの体験談は非常に興味深い。SONYも、大企業がもつ弊害に直面していたことが良くわかる。それにしても、多くの実績を残した辻野氏が、疎まれるように次々と試練の道をSONYという会社から与えられていったのは、運命であったのだろうか。

コクーンのプロジェクトは、2001年当時はまだ誰も理解しえなかったのかもしれない。
当時の辻野氏は次のように考えた。
”次世代のテレビ、単なる受像機ではないテレビとは一体何であろうか?この命題に対する当時の私の答えは、「ネットワークと共に進化するテレビ」というものであった。”
そして、”ハードウェアセールス以外の新しい収益源を開拓していくものでなければならない。”
コクーンとは、”「知性を持ち、学習、成長する生き物のような家電」”として捉えたのだ。当時としてはかなり時代を先取りしてる。
そして、時を経て
”今や、デジタルエンターテイメントの世界は、インターネットと連携した優れた生態系をトータルで作り上げることが勝負なのであって、昔のようにオフラインのデバイスの優劣で勝負が決まる時代ではなくなった。”
という結論に達したのである。

グーグルのホームペジに掲載されている理念を、グーグルが見つけた10の事実としてあげています。非常に参考になるので、本文から転用する。

・ユーザに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる
・ひとつのことをとことん極めてうまくやるのが一番
・遅いより早い方がいい
・ウェブでもも民主主義は機能する
・情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない
・悪事を働かなくてもお金は稼げる
・外には情報がもっとある
・情報のニーズはすべて国境を越える
・スーツがなくても真剣に仕事はできる
・すばらしい、では足りない


そのグーグルに対しても、冷徹な目が向けられています。
”グーグルも、今後、企業としてのライフサイクルをたどっていく過程において、この「10の事実」から外れ始める時が来るとすれば、その時が成長への赤信号、ということになっていくのだと思う。”

いろんなことに手を出しているようにみられるグーグルですが、その本質をずばり突いています。
”この「クラウドの発展を牽引し、そこで勝ち続ける」という一点において、きれいいに説明できる。”

このクラウド化された世界で日本の企業はいかに生き残っていけるのか。その方向性を示しています。
”「情報としての付加価値」はクラウド側にすべてが溜まっていくので、クライアント側のプロダクトを中心にやってきたところにとっては、それらクラウド側に存在する無限の情報を、いかに便利で有意義に使いこなす手元のデバイスを作れるか、が勝負になる。”

インターネットの時代とは何かを捉えています。
”ウェブの世界では、まずやってみることが大事。”
”特にインターネットの世界では、スピードが最も重要で、やるリスクよりやらないリスクの方が高い。”

ここで紹介されている、”グーグルのFind itやFix it”の手法は、集合知を利用した問題解決方法として応用が効きそうだ。みんなで考え、みんなで解決しよう!

”現在価値と将来価値”は、非常に重要な考え方だ。
”「現在価値」が大きくても、日々「将来価値」を生み出すような企業活動を伴わない会社は、いずれその企業価値を目減りさせ衰退していく。”

エピローグの一番最後にかかれている、”何しろ、まだまだ、これからがやっと本番なのだ。”という言葉には、大きく勇気付けられます。

とにかくめちゃくちゃ刺激を受ける本です。読了後、即、辻野氏のTwitterをフォローしました。
あと辻野氏は新しく会社をおこされています。HPはこちらです。
もしや、と思っていたのですが、ファウンダーにはあの出井さんも名を連ねています。なんとXJpanのYOSHIKIさんもいます。すごい面々ですね。
HPにある、CEOである辻野氏のメッセージを転載します。
”日本には、優れた人材、アイデア、コンセプト、デザイン、技術、製品、文化、生活習慣などがたくさんあります。これらが日本国内のみに留まっているのは人類全体に取っての大きな損失でもあります。ネット時代の恩恵をフル活用して、これら日本の優れた資産をグローバルビジネスとしてプロデュースしていくこと、それがこの会社の使命です。”
そうなんです、日本の企業はいま元気がなのですが、もっと変革できる可能性があります。そして、そのベースである”日本”という”国”や”文化”に自信をもっていいのではないでしょうか。