Blue Box事件とキャリアとの戦い

まずこの二つのビデオを紹介します。
若かりし頃の、スティーブ・ジョブズ氏とスティーブ・ウォズニアック氏である。語られるのは、Blue Box事件のことだ。
まずは、スティーブ・ジョブズ氏のビデオから。

続いて、スティーブ・ウォズニアック氏のビデオだ。

Blue Boxとは何か?電話のダイアリングをシミュレートして、電話をハッキングする端末だ。ただ、現在ではこのハッキングは通用しない。二人のスティーブもこのハッキング端末を作って売り飛ばし、おおいに儲けたようだ。
このハッキングの原理は簡単で、当時のAT&Tの電話接続方式で2600Hzがトーン信号であることをうまく利用し、電話線にただ乗りするのだ。2600Hzのトーン信号は、電話線が待機状態を示す信号で、一度電話して呼び出している間にこのトーン信号を電話線に発信すると電話線は待機状態になる。次につなぎたい電話番号を規定の周波数で発生してやると、相手に電話がつながるのだ。この信号を発生する端末がBlue Boxと呼ばれた。
紹介したビデオは、Blue Boxでおおいに儲けた当時を、二人のスティーブが語ったものだ。
ウォズニアック氏の登場するビデオは再現フィルム風に構成されている。最後は、電話線をハッキングしているところを御用となったようである。
ジョブズ氏の登場するビデオにはBlue Boxも登場し、その使い方も紹介されている。このビデオの前半が非常に象徴的で、延々と繋がる電話線が描かれている。最後はパラボラアンテナを介し人工衛星まで繋がっていくのだ。どこまでも繋がっているという光景は、まさに今のネット社会をも描いている。
ジョブズ氏はこのころからキャリアに対する対抗意識をもっていたのだろうか?どこまでも繋がっている通信網を管理しているのは、昔も今もキャリアだ。この通信網を利用する為には、キャリアの意向に従わなければならない。この主従関係を逆転すべく登場したのがiPhoneだ。D8のインタビューでもジョブズ氏は語っている。”電話自体に口を出すな。電話の使い方はわれわれにまかせろ。キャリアはネットワークだけを気にしていてくれ、と最初にいった電話だ”と。
ただ現在もジョブズ氏がキャリアとの戦いに勝利した訳ではない。それに、キャリアによる拘束によりiPhoneの売り上げがのびない可能性も秘めている。(この記事”「iPhone 4」購入への障害、アンテナ問題より通信事業者--米調査”を参照されたし。)一社の通信業者で提供されている国々では、iPhoneの普及が飽和点に達する可能性がある。米国では、AT&TiPhoneを独占販売しているが、アンケートによるとAT&T以外のキャリアでの使用が熱望されている。
Googleもこのキャリアとの戦いに挑んだが、結局負けてしまった。(この記事”Nexus OneはGoogleの夢だった, それをぶちこわしたのがキャリアの亡霊 ”を参照されたし。)エリック・シュミット氏が描いたのは、Nexus Oneでただ同然の電話を実現しようとしたのだ。通話や通信も無料。利用する端末はただ同然の価格。これをこれから爆発的に拡大するであろう携帯端末での広告料金でまかなう計画であった。ただ、キャリアの介入により頓挫した。それに最近は逆に、Verizonとネットの中立性の指針を発表し(かなり批判を浴びているが)、キャリア側にすり寄ろうとしているのだ。
AppleよそしてGoogleよ、再度キャリアの呪縛を解く為に立ち上がってくれ。