Appleのクラウド戦略、そしてWeb3.0。

Appleクラウド戦略について、ちと思いを巡らしてみた。
■ クラウドの行き着く先
クラウドの本質は、ロケーション・フリーとリアルタイムである。これを支えるのは、あまり前面に登場しないが、高速通信インフラ、高速無線インフラの整備がある。
クラウド”という言葉は、GoogleのCEOである、エリック・シュミット氏が、”米国カリフォルニア州サンノゼ市 (San Jose, CA) で開催された「検索エンジン戦略会議」 (Search Engine Strategies Conference) の中で「クラウド・コンピューティング」と表現。”(注:ウィキペディアから引用)が最初と言われている。この時の、シュミット氏が意味する”クラウド”とは、全てのデータを、全てのビットを、全てのデジタルデータを囲い込むことを意味していたのではないか。これは、Googleのコア技術である”検索”というものを最大限に生かせる隠されたメッセージでもあった。ただ”クラウド”は、デジタル化(デジタル化したものが文字に限らず、写真や動画にも及んだ訳であり、メディアが全てデジタル化された)とインターネットの進化により、当然の如く、帰結されたことだ。結局、デジタル化とインターネットの進化により、巨大なデジタル情報流通網が構築された訳である。
インターネットの進化によるデジタル情報流通網の構築、データのローカル化をセンター化(共有化)へ、そして通信インフラの整備により、さらにロケーションフリー(どこでも)とリアルタイム(同期化)が強化され、”クラウド”の骨組みが完成する。そして、このデジタル情報流通網とリアルな世界との結合(リアルな世界の情報蓄積と、リアルな世界への情報提供)が生まれた。その結合はさらに一般的な結合(パブリックなデータ、パブリック・クラウド)からパーソナルな結合(パーソナル・ログ、パーソナル・クラウド)へと向かうだろう。これが、”クラウド”の行き着く先である。
Web2.0とは、クラウドが構築された時代。インターネットの進化により、巨大な情報流通網(双方向が前提)が構築された時代といえる。
Web3.0とは、クラウドが行き着いた時代。クラウドが完全にパーソナライズされた時代。リアルな世界との結合とパーソナライズが実現した時代、といえるかもしれない。


■ Appleクラウド戦略
さて、Appleクラウド戦略であるが、誰がみても現時点では非常に弱い。この辺は、オライリー氏の投稿State of the Internet Operating System Part Two: Handicapping the Internet Platform Warsにも書かれている。

ただ、最近次のような記事がある。Appleノースカロライナ州に巨大なデータセンターを構築しているという記事だ。
Appleの10億ドルのデータセンターは年内完成。クラウド版iTunes、だよね
このデータセンターにAppleは10億ドルを投入する。これは、MicrosoftGoogleがデータセンターに投資する約2倍の額だという。それだけ巨大なのだ。記事では、これはMobile Meのためだとは到底思えず、噂されているiTnuneのクラウド版をサポートするためのデータセンターだと結論づけている。
さて、Appleクラウド戦略とは何か。”クラウド”の最終目標であるパーソナル・クラウドをターゲットとしている、としか思えない。個人資産(入手したコンテンツ)の保護と同時に、個人資産(コンテンツ)のクラウド化である。まず個人が取得したコンテンツは当然クラウド化してもらった方がいい。デジタルコンテンツが、一元管理されるのは、何よりも便利だ。クラウド化により、どの端末でも(Apple製またはAppleが公認した端末)、どこにいても自分のコンテンツにアクセスできる。
コンテンツのクラウド化の次のサービスとして、パーソナル・ログを活用したクラウド・サービスに向かう。たぶん、そしておそらくそうなる。
例えば、取得したコンテンツの傾向からユーザの好みを分析できれば、これとロケーションサービスとを組み合わせて、おすすめのお店を即紹介できる。ユーザのお好み情報が分析できれば、インターネットに流通している情報から、自動的に必要とする情報を収集整理してくれる。要は、クラウドが個人を支援してくれるのだ。
ユーザがこの利便性を評価すれば、ユーザが積極的にログを残していくことになる。Appleはこのログも取り込んでいくだろう。ログが増えれば、さらに利便性の高い情報提供や個人支援が可能となる。
クラウド化の戦略は誰が考えているのか不明であるが、Appleの貫徹されている理念は、消費者にとって何が一番ベストか、ということだ。この消費者(=個人)が、一番お気に入りのサービスがうけられるようにしていくのだ。
Appleが”クラウド”化を宣言するのであれば、おそらく、よりパーソナルなサポートを全面に押し出すであろう。個人の全てのデジタル活動を取り込んでしまうのかもしれない。Appleというブランド、きちんとポリシーをもって管理するというブランドをもって、個人のクラウド化を取り込むこともできる。
Appleは一気にWeb 3.0を目指しているのかもしれない。