アップル vs. グーグル

何とも刺激的な題名である。

アップルvs.グーグル (ソフトバンク新書)

アップルvs.グーグル (ソフトバンク新書)

小川浩氏と林信行氏が、交互に各章のテーマについて書いています。章題を列記すると、概ね主張がわかるので、章題を表記して感想を述べていきます。
第一章 ポストiPhoneの世界で何が起こっているのか?
林氏:蜜月関係の果てに敵同士を「演じている」アップルとグーグル
この章の結論を端的に表している。何かにつけアップルとグーグルの敵対がとりざたされているが、林氏の意見には賛成である。おいらが考えるに、同じようなビジネス領域への進出(買収)が、両社の激突と言われているに過ぎず、両社の目指すところは異なっている。グーグルがNexus Oneを製品化したのは、発案者のエゴがある、といった記述が本文にあるが、なるほどと思わせる。グーグルの目指すところからすると、Nexus Oneの製品化は異質であった。そして結局今では、Google直販は取りやめとなり、パートナー企業からの販売となった。グーグルは、インターネットの入り口を支配したいだけであって、電話を支配したいわけではない。
モバイル向け広告会社の買収(GoogleのAdMob買収、AppleのQuattro Wireless買収)も両社の敵対の象徴とされているが、Googleのそれは、Googleの収益強化のためであり、Appleのそれは、WWDCのキーノートスピーチでもあったが、アプリ開発者の囲い込みが目的である。iPhoneiPadを支えているのはその膨大なアプリケーションであり、無料のアプリも多数ある。このアプリ開発者へ広告収入の道を見いだしってやっているのである。
この章では、アップルが何故あれほどフラッシュを毛嫌いするのかが、6つの観点から書かれており、非常に理解しやすくまとまっています。
小川氏:PCの時代が終わり両社の思想の違いが浮き彫りになった
Appleは、iPadによりGUI(グラフィカルユーザインターフェイス)からNUI(ナチュラルユーザインターフェイス)へと変革させた。そしてiPadがPCの時代を終焉させる、と言っています。これは非常に重要な視点です。iPadが発表されたときに、おいらもそれを強く感じました。(ブログをみてね。→ iPadに隠されている脅威iPadは、まじヤバい。) 

第二章 「戦争」はどこで起こっているのか?
小川氏:戦場は「デバイス」から「クラウド」へ
グーグルが視野にいれている事業領域は、PC、携帯電話、テレビ、自動車の4つの領域である。これらに搭載されるOSとしてアンドロイドがあり、全てをインターネットへと誘うのである。
アップルのiTuneはクラウド化へ向かう。これは、当然の流れだ。
おいらが考えるに、両社は当然クラウド化を意識しているが、ビジネスでは敵対することにはならない。グーグルはすべてをクラウドへ誘うしくみを作ろうとしているが、アップルはコンテンツやアプリケーションのクラウド化された流通網を作ろうとしているからだ。
林氏:モバイル時代のOS戦争は、互いに「敵」を必要とする
両社の戦いは、モバイルOSを巡る戦いでもある。
これは、モバイル化とクラウド化が切っても切り離せない関係にあるからだ。おいらは、モバイル化がクラウド化を加速させていると考える。

第三章 それぞれの戦略と戦術
小川氏:世界を変える2社の真逆のアプローチ
”アップルはソーシャルメディアのパートナー”に対し”ソーシャルメディアを警戒するグーグル”と論じている。これは分かり易い切り口です。そしてソーシャルメディアが、全ての情報を整理したいグーグルにとって、その目的を阻もうとしている。
林氏:「誰でも」と「上質な体験を誰でも」の違い
グーグルとアップルの戦略の違いが、端的に語られています。非常に分かり易い。表題の通り、「誰でも」がグーグルであり、「上質な体験を誰でも」がアップルだ。

第四章 戦いに割って入れなかった日本企業が学ぶべきこと
この章は、非常に頭が痛い問題だ。両氏とも日本企業に手厳しい。ただ、事実でもある。
小川氏:「ユーザの声を聞く」だけではイノベーションは生まれない
最近グーグルTVで手を組んだソニーも一刀両断にされています。そして、今の戦いに割って入れる日本の企業はいないのではないかと、結論付けています。残念ながら、おいらもこの意見には賛成です。現在の日本の大企業は、グーグルにもアップルにも太刀打ちできないのです。それも僅差での遅れではなく、二歩も三歩も遅れをとっており、どうにも追いつかないのです。追いつくためには、このクラウド化の流れの先を睨んだ戦略を立てない限り無理です。
林氏:今は真剣勝負の時代
ここでは、ソフトウェアの重要性が語られています。ほんと、そうですね。
長期的展望に立つことも訴えています。ほんと、そうですね。
”今は真剣勝負の時代だ。アップルの社員もグーグルの社員も、皆、本気で世界を変えようと真剣勝負を続けている。”といった言葉は、ほんとに身に染みます。