D8で Steve Jobsが語る。(上の巻)

D8でのスティーブ・ジョブス氏のインタビューです。Steve Jobs live from D8に掲載されたインタビュー記事を訳したものです。(この訳し作業をしていたら、6月6日の早朝、すでに訳された文章が、速報:スティーブ・ジョブズ インタビュー@ D8に掲載されていたことを知って、ショックを受けました。何故なら、これを訳すことに思い入れがあったのと、結構訳すのに時間がかかり、自分でいうのも何ですが、労作だったのです。一度はブログでの掲載を思いとどまりましたが、まーそんなことでもあり、あえて掲載することにしました。結構長文なので、3回に分けて掲載させて頂きます。上の巻、中の巻、下の巻となります。
訳については、どうしてもうまく表現が分からない箇所とかは、上記の日本語訳記事や田園 Mac 〜Mac Pastorale〜さんのブログを参考にさせて頂きました。また、ファンも多いと思いますが、MACLALALA2さんのブログも参考にさせて頂きました。
注意が必要なのは、D8のインタビューの表現が、engadgetの記事に忠実に反映されている訳ではないです。これは、D8のビデオを観ても分かります。ところどころ、抜けている発言もあります。ただ、このインタビューの、それぞれの思いは通じていると思っています。おいらは、インタビューのやりとりやJobs氏の熱い思いが、うまく伝わっていればうれしいです。インタビューで、Wは、Walt Mossberg氏、Kは、Kara Swisher氏です。SはもちろんSteve Jobsを表します。
それでは、インタビューの始まりです。

D8でSteve Jobsが語る。(上の巻)

K:スティーブ、今週(時価総額で)マイクロソフトを越しちゃったわね!
S:まー、たいしたことないよ。ちょっと思いもしなかったけどね。
W:ちょっと思いもしなかったか。君に話しかけたことを、今でも覚えてるよ。君がAppleにカムバックしたとき、そう会社が調子悪かったときのこと。
S:あー、会社がつぶれかかってときだ。破産宣告から90日たった時だ。優秀な人材は去ったと思ってたんだ。でも、この素晴らしい人材は残っていたんだ。言ってやったね。君たちなんでここに残っているのさ?(笑)彼らはこう言ったんだ。アップルを信じてるんだ。この場所が象徴するものが愛しんだ、って。そのことが、アップルを一生懸命に仕事をこなすことに向かわせたんだ。

W:うーん、あなたの将来について話したかったんだが、論争がありましたね。それについて話したい。Flashについてね。あなたは、この手紙を公にしました。手紙の中で、あなたがいったことが全て本当であっても、この突然のことが、消費者にとってフェアかそれともベストなのでしょうか?
S:そう、二つあります。あなたが、おっしゃったことに戻るでしょう。アップルは、他の会社のようにリソースを持っていません。どの技術に乗っかるか選択します。将来性があり見込みのある技術を探します。様々な技術には、サイクルがあります。夏のような最盛期があり、そしていずれ終わりを迎えます。うまく選択すれば、膨大な労力を節約できます。このことについては、アップルには歴史があります。3.5インチフロッピーです。アップルは、それをポピュラーなものにしました。でも最初のiMacは、フロッピーを搭載しませんでした。シリアルとパラレルのポートも搭載しませんでした。USBの搭載はiMacが最初でした。光学式ドライブの搭載をしなかったのもアップルが最初でした。MacBook Airでね。それをしたとき、みんなクレイジーだっていってましたよ。ある時は、正しい選択をしなくてはなりません。Flashはそのような存在です。HTML5は来るべきものなのです。
W:でも、わかるでしょ。
S:Flashをサポートしたスマートフォンの出荷はないです。ここ2、3年はそうなるといわれてました。でもHTML5が、登場し始めます。
K:でも、消費者にとっては、どう?
S:分かるとは、思えません。
W:みんながサイトを観にいったときに、表示しない箇所がある・・・。
S:その穴は埋められつつある。ほとんどが広告です。
W:たいがいは、デベロッパーの環境によるね。
S:HyperCardはもうちょっとポピュラーだった。
W:Flashより、ポピュラーではなかったよ!
S:いや、その頃はね。われわれのゴールは、ほんとに単純なことなのです。技術的な決断をすること。われわれは、これをプラットフォームに採用することはありません。Adobeには何かいいことを示してくれといいましたが、彼らは何もしていません。われわれが、iPadを出荷するまで、Adobeはそのことについて騒ぎ立て始めたていなかったのです。われわれは、戦うことにしたのです。Adobeの一部の製品を使わないことにしたのです。彼らは、それを大げさに取り上げたのです。それが、私がそれを手紙に書いた理由です。私は言いました。もうたくさんだ。われわれのことを悪く言う奴らにはうんざりしています。
W:うーん。次の話題に移りましょうか。これについてあまり話したくないでしょう。もし、マーケットが、”おいおい、それって大事なことんだぜ。Flashなしでは大したことができない。”といったら?マーケットがFlashを使いたいといったら?みんながiPadは役立たずだといったら?
S:ものごとは、組み合わせです。製品にはいいところもあるし、悪いところもある。もしマーケットが、間違った選択をしたと言うなら、われわれは変更します。アップルはすごい製品を世に送り出すことにつとめています。これがすごい製品だと思っていなかったら、とっくにやめてます。アップルはヒートするような製品を世に送りだすんです。世界中のお客さんにベストな製品を送り出すんです。うまくいっているのなら、買うでしょう!うまくいっていないなら、何も売りません!そして、言わなければなりませんが、みんなはiPadを気に入っているみたいですね!(大きな笑いと拍手)

K:だいぶたってから、Eメールしてたみたいだけど。コミュニケーションスタイルで、何かあったわけ?ValleywagにEメールしましたよね。
S:彼は、ジャーナリストだとは言いませんでした。私は遅くまで起きていて、働いていました。こいつは、不愉快なEメールを送りつけ始めたのです。私は、こいつをまともにしてやりたかった。私は、こいうことに疎いです。そして、彼はそれを公表したんです!
W:バーに置き忘れたプロトタイプのことだけど。
S:そいつ、・・・誰が言えます、ジャーナリストかどうかって。
W:全容を知るすべもない。ただ、真実は何かを訊きたかったんだ。一部の人は、金まみれのジャーナリズムを良しとはしない。もし、われわれが知っていることが真実なら、一方では警察が出向き、捜査令状なしにコンピュータを押収した。そこにはたくさんの資料がある。少なくとの私のコンピュータは誰にも渡したくない。彼らは、ジャーナリストの資産を完全に押収したんだ。落としどころはどの辺かな?
S:調査は進行中です。私が知っていることは話しましょう。製品を世に送り出す場合、テストが必要です。屋外に持ち出す必要があります。ある社員が、それを持ち出しました。製品をバーに残したのか、バッグから盗まれたのかの議論はあります。それを見つけた人物は、売りに出そうとしました。EngagetやGizmodoにね。その電話を手に入れた人物は、ルームメートのコンピュータに繋ぎました。そいつは、証拠を隠滅しようとしました。そしてルームメイトが警察を呼んだのです。そう、この話は摩訶不思議です。電話は盗まれ、盗まれた所有物が売られ、お金を強要したのです。性的なことがあったと確信してるけどね。(爆笑)話題が満載です。DA(地方検事)が調査中です。私が知る限り、この事件に関連した押収物をのみを調査することを確認させている。ただ、どのように、決着するのかわかりません。

K:フォックスコンのことはどうかしら?
S:アップルは、この会社のトップ顧客です。アップルは、この会社のすべてを把握しています。知っていることの一部をお伝えできます。アップルは、これについて徹底的にしています。フォックスコンは労働搾取工場ではありません。フォックスコンは工場です。でも何てことか、レストランや映画館もあるんです。工場にですよ。でも自殺や自殺未遂事件がありました。そして、40万人の労働者がいるのです。フォックスコンでの自殺率は、米国の自殺率より低いです。でもごたごたが続いているのです。故郷のパルアルトでも、連鎖的な自殺がありました。アップルはそれを知ろうとフォックスコンに人を派遣しています。それはやっかいな状況です。アップルはこれを分かろうとしています。アップルは人を派遣しました。

W:さあ、次の話題に移りましょう。君は、マイクロソフトとのプラットフォーム戦争に多くの時間を費やしたね。でもマイクロソフトが勝ちました。マックは復帰を果たそうとしています。でもマイクロソフトが支配してます。新しいプラットフォーム類があります。そして実にうまくいっている。スマートフォンタブレットの出だし。Googleはたくさんの新しいプラットフォームを構築しています。クロームOS、アンドロイド。そいしてあなたは、これら全てのソーシャルプラットフォームを手に入れた。フェイスブックは巨大なプラットフォームです。カナと私はプラットフォーム戦争が続いていると思うけど、どう?
S:ちがう。決して、そう思わない。アップルはマイクロソフトとプラットフォーム戦争をしてるなんて思ってもいません。まあそれが、負けちゃった原因かもね。(大爆笑)アップルは、ベストな製品を世に送り出したいだけなんだ。どうしたら、もっとよい製品を構築できるか考えているだけなんだ。
W:でも、Googleについてはどう?何か変わったよね。何が起きたの?
S:Googleは、アップルと競争することに決めたんだ。そう、Googleはね。
W:電話でも?
S:そう。
W:デスクトップでも?クロームで?
S:クロームは違うね。分かってと思うけど。クロームはウェッブキットをベースにしている。Appleのウェブキットで動くんだ。今のブラウザは、ウェッブキットをベースにしてるんだ。ノキア、パーム、アンドロイド、リム、そしてアップルもね。われわれは、IEに対し、真の競争相手を作りだしたんだ。モバイル分野でそれはNo.1だ。
K:Googleを競争相手としてどうみてるの?どう感じてる?何か起こった?
S:Googleは、アップルと競争することに決めたんだ。でも、アップルは検索ビジネスには手を出さない。
W:そうだね、君は、ある朝目覚め、アンドロイドのことを知った。
S:たぶん。
W:裏切られたっていう思いだった?
S:私のセックスライフは、調子いいよ。(何?大爆笑)
W:君の方はどう?
K:きかないで。
K:GoogleiPhoneから排除するつもりですか?
S:いいや。アップルは、Googleよりもいい製品をつくりたいだけさ。市場で好んでいることは、アップルの製品にしている。それについて消費者に伝えている。みんながそれを気に入れば、明日も仕事にくるってことだ。企業向けはそうではない。それに決定を下す人々は、ときたま混乱している。他の会社と競争することは、出し抜くべきことを意味する訳ではないよ。

W:昨年、われわれは、Siriという検索会社をもってました。
S:Siriを検索会社と呼んだ覚えはないですよ。
W:そう、君は、この検索会社を買収した。
S:Siriは検索会社ではない。AIの会社なんだ。アップルは、検索ビジネスに進出するつもりはない。アップルの関心事ではないです。他の企業が十分にやっている。
(上の巻 終わり)
    
以上で、上の巻は終了です。中の巻、下の巻では、iPhoneiPadの話題、アプリ審査の問題、アップルという会社について、プライバシー問題とJobs氏へのQ&Aとなります。

この上の巻で印象的なのは、
アップルの社員が、”アップルを信じてるんだ。この場所が象徴するものが愛しんだ(I believe in Apple. I love what this place stands for.)”という冒頭の件です。社員に愛されている企業は、素晴らしいことです。
もうひとつ気になったのは、Siriの買収に関してのやりとりです。Jobs氏は、Siriを検索の会社ではないと、かたくなに否定します。SiriはAIの会社だと言い張ります。Googleは検索の会社とみられていますが、彼らの目指すものはAIです。ただこの辺が、Jobs氏流の表現が現れています。現在の検索は、まだAIにはほど遠い。でもAppleはAI、それもパーソナルなAIを、きちんと目指しているといったメッセージでもあります。Appleが、この”パーソナル・アシスタント”のビジネスで、ステップアップしたアイデアを実現することを、おいらは期待してます。