デザイン思考が世界を変える

IDEOのCEOでもある、ティム・ブラウン氏自らの著作です。
このハヤカワ新書juiceシリーズは良書が多いです。おいらはこのシリーズのファンで、この本で6冊目になります。早川書房が版元ですが、ハヤカワといえば、昔はミステリやSF(演劇もあったような気もする)が中心でした。昔からするとかなり様変わりしましたが、今後も海外の良書をいち早く紹介して欲しいですね。

デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)

デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)

デザイン思考って何でしょうか?簡単にいうと、人間中心です。人間の行動を中心に捉え、物事を考え、問題を解決するアイデアを見いだすという事です。

本の中で語られた、気になる言葉をピックアップします。
・デザイン思考では、3つの制約を全て解決するのではなく、3つのバランスをとる。3つの制約とは、技術的実現性、経済的実現性、有用性である。
イノベーションの3つの空間とは、着想、発案、実現である。
・成功するデザイン・プログラムの3つの要素。洞察(インサイト)、観察(オブザーベーション)、共感(エンパシー)である。
洞察:他者の生活から学び取る。実際に観察すること。
観察:人々のしないことに目を向け、言わないことに耳を傾ける。
共感:他人の身になる(他人の担架に横たわる)
洞察→観察→共感とうい一連のプロセス。
・今は、「企業が新製品を作って消費者が受動的に消費する」20世紀型の考えと、「消費者自身が必要なものすべてをデザインする」未来型ビジョンの中間点に位置する。
・デザイン思考を取り入れている組織には、一つの特徴がある。いたるところに、プロトタイプがあるのだ。
・シナリオは、人々をアイデアの中心に据えることで、技術的・外観的な細部に迷い込むのを防ぐ働きがあるのだ。
・オンライン・ソーシャル・ネットワークを利用したプロトタイプ製作の可能性。(バーチャルなプロトタイプを見せることによって、多くの意見を募る。)
ローレンス・レッシグ教授は巨大なメディアの時代において想像力を取り戻すために力を尽くしている。
ローレンス・レッシグ教授のTEDビデオがあります。今は、情報の消費から、情報の創造へ移行したことを訴えています。非常に参考になるビデオです。氏は、法学者すが、法が人々の自由な行動を拘束する場合もあると言っています。(字幕付きはこちらです。)Remixされたビデオの紹介が8分30秒位からあり、これが面白いんです。よくできています。流通している画像と音楽を組み合わせて、新しい作品を創る(新しい意味付けをする)というコンセプトです。


・私たちがデザインしようとしているのは、名詞ではなく動詞なのだ。(例えば、”電話”をデザインするのではなく、”電話をかけること”をデザインするのだ。)
・コンテンツのデジタル化に抵抗するメディア企業、サービスを一カ所から購入することを強要する携帯電話サービス業者、法外な手数料を要求する銀行は、より柔軟で独創性のある競合他社にすきまを与えてしまうだろう。
・経済的な持続可能性を実現する。(継続可能性のキーが何であるかは、地域や個人によって異なる。このため地域に住む人々の実際の生活を観察する必要がある。)
・デザイン思考は、知識と行動のギャップを埋める必要がある。
・デザイン思考のツールは、現場におもむき人々から発想を得る。プロトタイプ製作を通じて両手を使って学ぶ。物語を築き上げてアイデアを共有する。異なる分野の人々とタッグを組む。
この一連のプロセスがわかるビデオがあります。ショッピングカートを改良をするまでのビデオです。これを観ると、多岐に渡る専門家どうしののディスカッションにより、問題点を浮き彫りにします。問題点を共有します。次に現場におもむき、実際のシーンをチェックします。そして解決のためのアイデアを書き出します。絵で描きだします。これらの作業で制限時間を設けることも重要です。そしてプロトタイプの製作へと移ります。最後に、プロトタイプを使って、現場で検証します。


・偉大なデザイン思考家は、「普通」を観察する。(日常の行動の中に、多くのアイデアが埋もれている。)
・アイデアの成功を、世界への影響で測る。

まとめるてみると、人間を中心にすえ、洞察(インサイト)、観察(オブザーベーション)、共感(エンパシー)のプロセスを通じで解決のアイデアを見いだすことですね。そしてプロトタイプを製作すること、実際に現物化することが重要です。これはビデオでもいいでしょう。目の前に描かれた未来は、なんと想像力をかき立ててくれることでしょうか!