ウェブ時代5つの定理

あの”ウェブ進化論”の梅田望夫さんの著作です。二年ほど前に出版された本の文庫版です。

ウェブ時代5つの定理 (文春文庫)

ウェブ時代5つの定理 (文春文庫)

副題の通り、未来を切り開く為の、先人たちの思いのこもった言葉を集めた金言集です。
題名の5つの定理とは、
第一定理:antrepreneurship
第二定理:Team Strength
第三定理:Technology Mind
第四定理:Googliness
第五定理:The Style of Maturity
この本の中で取り上げられている言葉を全てここに書き出したいのですが、そうなると、同じ本を一冊書くことになってしまうので、その欲求をぐっとこらえることにしました。たくさんのいい言葉が詰まっているのですが、おいらのお気に入りの言葉を抜き出します。
第一定理のアントレプレナーシップとは、「起業家精神」も含むが、「進取の気性に富む」ことの意です。
ゴードン・ベルの言葉から始まります。著者を、起業へと駆り立てた言葉です。”もしフラストレーションが報酬よりも大きかったら、そして、失敗の恐れよりも欲の方が大きかったら、そして、新しい技術や製品がつくれるのなら、始めよ。”
アンディ・グローブのあまりにも有名な言葉。パラノイアだけが生き残る。” この言葉をもとにINTELは今日の地位を築き上げました。
ティム・オライリーの言葉も好きです。”私たちは、「世界を変える」手助けをしている。未来を発明する人たちから知識を得ることで、それをしている。だから本当にクールな人たちや、面白いことをやっている人たちを探して、その人たちが言っていることを世に広めてみたい。”
スティーブ・ジョブズの言葉もいい。シリコンバレーの存在理由は「世界を変える」こと。「世界を良い方向へ変える」ことだ。”
第二定理にもゴードン・ベルの言葉が引用されます。”スタートアップの形成で重要なのは、「人、人、人」である。”  ”CEOが会社のすべてのスタンダードを決める。「会社の文化」を形成するすべての特質を決定する。”
Amazon創業者のジェフ・ベゾスの言葉。”間違った人を雇ってしまうくらいなら、五十人面接しても誰も雇わないほうがいい。会社の文化は計画してつくられるものではなく、初期の社員たちから始まって、徐々に発展していくものだ。”アメリカの企業は、自社の企業文化を大切にする。そして、自社の企業文化のカラーを前面に打ちだす。
またまた、ゴードン・ベルの言葉。”トップレベルのチームはマネジメント重視でなく、行動重視でなければ駄目だ。”
Googleの女性副社長、マリッサ・メイヤーの言葉。”政治的になるな、データを使え。”
政治的な決着が好きな日本の企業文化とは全く反対か。
Amazon創業者のジェフ・ベゾスの言葉も重い。”私たちが成功してきた理由は、嵐のような環境変化の中でも、ただひたすら顧客にフォーカスしようとしてきたからだ。”
強い信念のもと、今のAmazonを築き上げてきた事がうかがえる。

第三定理は、技術者の眼だ。
「ホールアース(全地球)カタログ」を書いた、スチュアート・ブランドの言葉。反戦の抗議活動、ウッドストック、そして長髪も忘れてしまっていい。六十年代の真の遺産は、コンピュータ革命だ。”
コンピュータは、個人のパワーを管理社会から解放するテクノロジーの象徴であった。
続いて、スティーブ・ジョブズの言葉。”強い「プロダクト志向のカルチャー」が必要だ。”
プロダクトへのこだわりこそが、Apppleの真髄だ。
そして、エリック‥シュミットの言葉。”インターネットが負けるほうに賭けるな。”
まさに、インターネットの申し子であるGoogleトップの言葉にふさわしい。
またまた、スティーブ・ジョブズの言葉。”音楽会社に頭のいい人間はたくさんいる。でも問題は、音楽会社の人間はみんな、テクノロジーピープルでないことだ。”
お〜、テクノロジー史上主義でいい。世界を変えるためには、テクノロジーがベースにないとだめだ。
第四定理は、グーグリネス。この章の出だしは、グーグルの不思議さで始まります。グーグルの「変な会社」感で始まります。グーグルとは、一体どんな会社なのでしょうか。その”言葉”で真の姿に迫ります。
エリック・シュミットの有名な言葉です。”「邪悪であってはいけない」”
宗教家や禁欲主義者が発する言葉のようだ。Googleは、今となっては、その企業規模からも、情報蓄積量からも邪悪の道に踏み出そうとすればできてしまいます。ただそれは、人間としての道から外れる行為です。その様な行為を戒める為の言葉ともとらえられます。この”邪悪な道”の誘惑に、Googleはいつまで耐えられるのでしょうか。人間の良心を、Googleが試されているようです。
創業者の、ラリー・ページは、きっぱりと言います。”私たちは、グーグルを「世界をより良い場所にするための機関」にしたいと切望している”
この”機関”という言葉も凄いですね。”会社”ではなく”機関”です。Googleを単なる一企業ではなく、公共的な機関ととらえています。人類の共有機関を目指しているように感じます。
エリック・シュミットの言葉は、本質をついています。”インターネットは、人間の最も基本的な要求、つまり知識欲と、コミュニケーションをはかること、そして帰属意識を満たすことを助けるものである。”
ラリー・ページは、もともとGoogleを普通の会社にしようとは思っていなかったのですね。株式公開の際に、投資家へ宛てたレターの冒頭の言葉です。”グーグルは「普通の会社」ではありません。そしてそうなろうとも思っていない。”
Googleの会社の雰囲気が伝わってくる言葉です。まずは、マリッサ・メイヤーの言葉。”あの二人(ブリンとページ)は権威が嫌いで、「何かしろ」と言われるのが嫌いだ。”  ”「誰かにやれと言われたから」という理由で何かをするな、という雰囲気がグーグルには浸透している。”
そして、エリック・シュミットの言葉。”一からすべて命令してほしいなら、海兵隊に行けばいい。”  ”私たちは混沌を保ちながら経営していると思う。”
最後は、第五定理です。
著者は、日本の匿名性に偏ったネット文化が、ネットの可能性を限定してしまうのではないかと危惧しています。
まずは、フェースブックを立ち上げた、マーク・ザッカーバーグの言葉です。フェースブックに存在するのは、リアルライフに存在するものの鏡像だ。”
著者はも語ります。”ウェブ上でのネットワークが生きたものになるかどうかは、それを使う社会における個人の成熟度にかかっている” そして、”「パブリックな意識」がネット空間を進化させる。”

この章の最後は、サンの共同創業者ビル・ジョイの言葉で締めくくられています。
”自分がやらない限り世に起こらないことを私はやる。”

本文中にある言葉を抜き出してきましたが、これ以外にも心に残る素晴らしい言葉が書かれています。また著者である梅田さんのシリコンバレーにかける思いが綴られており、一読(いやいや何度でも)の価値があります。
本全体から、著者がこの本に込めた、深い思いが伝わってきます。