ソースシャルネットワークはどう進化するのか。

『ウェブはグループで進化する』、をだいぶ前に読了していたのだが、自分自身がそれほどFacebookを利用しているわけでもないので、どう感想を書こうかと迷っていたのだが、最近になり、やっとソースシャルネットワークの楽しさの一部が分かってきた。
というわけで、『ウェブはグループで進化する』の感想を書く次第です。

ウェブはグループで進化する

ウェブはグループで進化する

著者のポール・アダムス氏は、ダイソン、Googleフェイスブックと言った一流の企業に身を起き、いまではフェイスブックのブランドデザイン部門のグローバル責任者を任されています。Googleでは、あのGoogle+の開発に携わっていました。
この経歴をベースに、本著は非常に示唆に富んだ内容となっています。

本著は、冒頭から刺激的な言葉で始まります。その言葉とは、"世界が変わろうとしている"です。
この変わろうとしている、新しい世界を築いている4つの変化をあげています。
第1の変化は、アククセス可能な情報の急増です。
第2の変化は、ウェブの構造変化です。コンテンツ中心型から人中心型へ変化しようとしています。
第3の変化は、人間関係を正確に把握し分析することが可能になったことです。
第4の変化は、人の意思決定に関する研究が進歩していることです。

本著は、この4つの変化を視野に置きながら展開していきます。
以下各章ごとのポイントと感想を述べていきます。

■第1章 変化するウェブ
この章では、
"ウェブは人を中心にした構造へと変わりつつある。"
ことが説かれています。
ウェブ自体は、爆発的な情報量をもとに進化が加速していますが、一方リアルな人間社会に目を向けてみると、
"人間の行動が変化するスピードは、技術の変化より非常に緩やか"
であり、
"現代のコミュニケーション技術を使えば、何千人といった人々とつながることができるにもかかわらず、人々は、ごく少数の親しい人々と付き合うというスタイルを維持している。"
状況です。
このような状況のもと、
"ウェブは、ますますオフラインの世界の姿に近づいていく。"
のです。

"変化するウェブ"を考えるに、 今後、人間の行動原理を知ることがますます重要になっていくのではないでしょか。

■第2章 人々がコミュニケーションをとる理由と方法
この章は、非常に興味深いです。
人々は、なぜコミュニケーションをとるのでしょうか?
それは、
"人々が会話するのは、情報共有によって生活が楽になるからだ。"
です。
なるほど、そうですね。会話を通して、自分の知らない情報取得によって、生活する上でのリスク回避が優位になるのです。
目的をもって情報収集するための会話もあれば、他愛のない会話から思いもかけない情報をえることもあります。全ての会話が、情報を得るためとは限りませんが、会話の中に、情報共有という要素が常に潜んでいるのです。

会話の中でさらに重要なポイントは、
"人々は、事実をシェアするのではなく、感情をシェアしている。"
ということです。
事実は当然のことながらシェアされるのですが、事実のみみをシェアするのではなくて、事実を感情でシェアするのです。感情に包まれた事実を、シェアし伝達するのです。これは、感情による伝達度の方が大きいということです。感情をプラスすることによって、事実の伝達度が増すということです。

■第3章 ソースシャルネットワークの構造が与える影響
なぜ、これほどまでにソーシャルネットワークがはやるのでしょうか。
それは、
"人は、生まれたときからソースシャルネットワークの一部である。"
からです。なるほど、そうですね。
それと、
"ソースシャルネットワークは成長する。
のです。時を経る過程で変化し、移り住む地域によっても変化していきます。

この章では、"本著での最も重要な主張"が展開してされます。
"「ソースシャルネットワークは独立したグループが結びついて形成されている」"
のです。
"グループは、成長の段階、共通の体験、共通の趣味を通じて形成される。"
のですが、
"人は、誰とつながるかを決めることができるが、つながった相手が誰とつながるかは決められない。"
のです。
"ただ、遠くつながった相手からも影響を受けることがある。"
ということです。

著者は現実世界のつながりをこのように述べているわけですが、たとえば、Facebookを見た場合、このようなつながりが形成されているかというと、まだそうではないと思われます。
おいらがFacebookを始めたのは、海外にいる親族からの友達リクエストがきっかけです。それから友達は増やしていますが、結局は何らかに形で親族と関係がある人たちだけと"友達"になっています。
社会におけるつながりは親族以外もあるわけですが、"親族つながり"になっている状況で、他のつながりをもつ人々と新たなつながりをFacebookの中で持つのは、かなり抵抗感があります。
本著でも述べられていますが、人間のつながりにはグループが存在します。
当然家族のつながりもあるし、大学や会社、共通の趣味や共通の体験でつながる場合もあります。また、住んでいたそれぞれの地域でのつながりもあるでしょう。
いまのFacebookだと、各グループのつながりが一緒くたになってしまいます。それに、強い絆や弱い絆は全く考慮されません。"友達"でつながっている全員に対して、Facebookに投稿された情報は、平等に瞬時に伝達されます。
もし、Facebookが、この不安や抵抗感を解決してくれるツールを提供してくれたら、Facebookは最強のプラットフォームになるのではないでしょうか。(いまでも最強かもしれませんが・・・)

Google+のコンセプト設計に携わり、いまFacebookに在職している著者に、期待するところ大です。

■第4章 人間関係が与える影響
この章では、人間関係のタイプとして、
"知り合い。情報源。遊び友達。協力者。仲間。癒し手。相談相手。親友。"
といった例をあげています。そして、当然のことながら、それぞれのタイプから受ける影響はことなります。
それぞれのタイプは、
"強い絆、弱い絆。"
でむすばれていますが、面白いことに、
"強い絆の影響は大きいが、弱い絆は重要な情報源。"
になるということです。
強い絆は、影響力が大きいのですが、多様な情報源とはなりません。
関係が濃密であるがゆえに、選択肢が狭まる可能性があります。
弱い絆は、影響力は小さいが、多様な情報源となりうる可能性があるのです。

■第5章 インフルエンサーという神話
この章では、マルコム・グラッドウェル氏が唱えた"インフルエンサー"とい概念に疑問を投げかけています。
本著では、次のように述べています。
"「つながりが多い」と「影響力が大きい」は、イコールでない。"
のである。
"情報が伝わるには、人々が影響を受けやすい状態であることが必要。"
である。
"人々の心理的なハードルが下がったときに、情報の拡散が起きる。"
のだ。

ふむふむ、この説も正しいような気がします。
影響力がある人でも、受けて側が何ら興味を持たない段階では情報の拡散は発生しないでしょう。受けて側に情報を受け入れる素地ができあがり、スレッシュホールドを越えやすい状況になって、
一気に情報の拡散が発生するのです。

第6章から第8章 は、"周囲の環境が与える影響"、" 脳が与える影響"、 "先入観が与える影響"と続きます。
これらの章は、人間行動学として、別に一冊の本を読んだ方がいいかもしれません。
キーセンテンスだけ抜き出しておきます。
・自分に似た人の行動をまねようとする。
・過去に起きた行動からも影響を受ける。
・所属する社会から影響を受ける。
・社会規範から影響を受ける。
・人間の行動の大部分は無意識のうちに起きる。
・脳は、細かい部分ではなく、物事と物事との関係性を記憶してる。

最後のセンテンスは、本著とはあまり関係ないかもしれませんが、人間の脳の記憶構造の本質をついているかもしれません。

■第9章 ソーシャルウェブにおけるマーケティングと広告
これからは、”妨害型マーケティング”ではなく、”許容型マーケティング”だと言っています。
「いいね!」ボタンは、許容型マーケティングであるとしています。
また、ソーシャルメディアが重要なのは、口コミを計測可能なものへと変えたことだ、と言っています。

人間の行動を計測可能にした、ということがかなり重要です。
計測可能となることにより、分析ができるからです。

”広告”という観点からすると、FacebookGoogleに比べポテンシャルがあるものの、マネタイズがうまくできていません。
最近こんな記事がありました。
消費者が購入を決定する要因は、最後のクリックで決定されるわけではなく、それ以前に消費者にインプットされて
いる情報提供の方が重要であるという主張です。これは一理あります。人間の行動原理からしても理がかなっています。
Facebookは何をしたかというと、Facebookの広告を見た人がその後何を購入したかを追跡できるようにしたのです。
その追跡調査の結果判明したのは、商品を購入した87%の人がFacebookの広告を見ていたとうものです。
これは重要です。おそらく多くの人は、最後のクリックが決めてではないんだよね、と薄々思いつつもうまく証明
できない。Facebookはそれを証明したのです。これは、人間の行動が計測可能になったからです。

さて、第10章 では、”結論”として、本著のポイントが簡単にまとめられています。