中国漁船衝突ビデオ流出

2010年11月4日の夜に、尖閣諸島で起きた中国漁船衝突ビデオが流出した。YouTubeにアップロードされ、11月5日には投稿者が自主的に削除したが、コピー映像が多数YouTubeにに投稿された。マスコミは、この投稿ビデオを追いかけるように、次々とニュースを流し続けたのである。
これは、インターネット時代を象徴する事件でもある。
インターネットが普及していない時代であったなら、おそらくこのビデオは、TV局へ匿名で送り付けられ、TV局はスクープ映像として特集番組を組んでいたであろう。それとも、その内容の衝撃さゆえ、放送後の政府からの圧力を恐れ、放送はボツになっていたかもしれない。
今は違う。インターネットを介して、誰もが匿名で映像を全世界に発信できてしまうのだ。それも個人の意思で。
一本のビデオが、世の中を変革してしまうほどの影響力を持つことができるのである。それも個人の力で。
このビデオ流出は、インターネト時代を象徴する事件でもある。

さて、ビデオを見て思うのは、なぜ日本政府はこのビデオを積極的に公開しなかったのかである。このビデオをみて何ら日本側に非がないことが分かる。これほど明らかに、どちらに責任があるかのかわかるビデオの公開に、なぜ躊躇する必要があったのか。最後のカードとしてとっておきたかったのか?そうはいっても、最後のカードはいつどんな場面で切ろうとしたのだろうか?
単純に考えると、ビデオを公開しなかったのは、日本政府の意とは反し、何らかの圧力があったとしか思えない。それでは、どこからの圧力なのか。当然のことながら、中国政府からの圧力である。ただ中国からの圧力に、それほど簡単に屈してしまうのだろうか。公開できない特殊な事情が潜んでいたと考えるのが自然である。特殊な事情とは何か。
尖閣諸島での中国船衝突問題を取り扱った番組で、あるコメンテーターが鋭い指摘をしていた。中国船の船長は軍人であると。それに本当の漁民であれば、あんなに肌が白くない。もっと日焼けしている、と指摘していた。なるほどと、納得した次第だ。
そうなのだ。”軍部”というキーワードでこの事件を読みとくと謎が明らかになる。(以下は、おいらの想像である。)
ビデオが公開された場合、どう見ても非は中国漁船側にある。こうなると船長の取調べは本格的になる。取調べが進むうちに、船長が軍人であることがばれる。そして軍部が勝手にやった挑発行為であることが明らかになる。
困るのは中国政府だ。中国政府は軍部を掌握していないことが、バレバレになるのだ。中国政府の意向を無視して軍部が勝手な行動を取っていることが明らかになってしまうのだ。そこで中国政府は日本政府にお願いしたのだ。ビデオは公開しないでくれ。すぐに中国人船長を釈放してくれと。
日本政府は中国政府の意を汲み、中国人船長を釈放し、中国に帰国させたのだ。中国政府はこれでひと安心だ。ただ、日本に対しては、国内に対するポーズもあるため強行姿勢を取り続けたのである。
中国政府のひと安心は長くは続かなかった。”軍部”は、デモといった揺さぶりをかけてきた。中国本土のあちこちで、反日デモが一斉に発生した。それも多数の若者が参加した。表向きは反日デモの様相を呈しているが、デモに参加した若者たちは、多くが職につけづ不満だらけなのだ。反日といった姿勢が、いつ反政府に向かってもおかしくないのだ。”軍部”はこの一斉に発生したデモを仕掛けている。そして中国政府に対し、メッセージを送っているのだ。もし仮に反政府デモが発生した場合、デモを抑えることができるのは”軍部”しかない。
中国政府もそのことには気づいている。その恐怖から、中国政府を守ってくれるのは、軍部なのだ。そうなると、軍部のステータスも上がってくるのだ。軍部の力が、徐々に徐々に上がっていくわけである。

最近ちょっと感じるのは、今の中国は世界で最も危険な国家になってしまったことだ。あまりにも強行で威圧的で挑発的な行動や発言が多い。この背景には、大きな力を持ち始めた軍部があるからではないのか。ちょっと心配である。今の中国の行動と比べれば、北朝鮮などはかわいいものだ。