Apple強し、されど危うし。

■ Apple強し
今やAppleが飛ぶ鳥を落とす勢いであることは、誰もが疑わない。iPhoneのSmart phoneの市場に置ける成功は、この記事"Pie chart: Apple's outrageous share of the mobile industry's profits"からも明らか(2010年1−6月の携帯電話市場で、Appleのシェアはたったの2.8%しかない。ただ、プロフィットのシェアは39%もある。利益を独り占めしているのだ。)だし、株の時価総額もMicrosoftをとうの昔に追い越し、一時期は二番目の時価総額まで上り詰めた。
それに、何と言っても4兆円近く(約460億ドル)もキャッシュを持っているのだ。(この現金を何に投資するかも興味津々であるが。)

Appleの成功は、その魅力的な先進的デバイスの提供や、iTunesApp storeによるコンテンツとアプリの供給源を提供してることで、ユーザにとって魅力的なエコシステムを構築していることにある。

しかし、この高い利益率はどのようにして生み出されているのか?これは、魔法ではない。
おいらが思うに、それは提供する製品のラインナップの少なさにある。売り上げが、429億ドルを越える企業にあって、その製品ラインナップが10をちょっと越える程度しかないのだ。
デスクトップ系は、MacPro、 iMacMac miniの3製品だ。ノート系も、MacBookMacBook ProMacBook Air の3製品。タブレット系は、iPadのみ。スマートフォン系は、iPhone4と iPhone3GSの2製品。エンターテイメント系は、iPod classiciPod touchiPod nanoiPod shuffleの4製品だ。サーバ系もあるが、Xserveしかない。合計で14製品しかない。(アクセサリ系のLED Cinema Display等は省いた。)
製品のラインナップ数が少ないのは、開発やメンテナンスの面を考えると非常に効率的だ。金と人の資源も集中して使える。無駄が無いということだ。それにコスト面についても昔のApple製品は高いといったイメージがあったが、今ではそれほどでもない。むちゃくちゃ安い訳ではないが、誰もが手が届くほどの価格帯だ。製造はEMSに任せ、部品はコモディティ化しているので、安価に調達できる。先進的なデバイスの投入による先行者利益とAppleブランドにより少しプレミアムをのせて販売すれば、十分過ぎる利益がでるのだ。
Apple強し、である。


■ Appleに忍び寄る影
AppleiPhoneiPadで大成功をおさめたが、他の企業もひたひたとAppleの後を追い、追い越そうとしている。
Androidの躍進は、目をみはるものがある。この記事”2010年上半期、米スマートフォン市場でAndroidがiPhoneを上回る”にもあるが、Androidの普及は爆発的にのびている。そしてAndroid向けのUIもiPhoneのそれに劣らずとも負けないUIが提供されつつある。先日のブログでTATという会社を取り上げたが、この会社は、主にAndroidをターゲットとしている。素晴らしいUIのビデオがあるので、再度掲載しておく。AndroidにこんなUIが満載されていたら使いたくなっちゃうよね。

そして最近一番驚いたのは、SamsugnのGalaxyTabである。7”タイプのタブレットPCだ。このビデオをみると、非常に魅力的な製品に仕上がっており、7”タイプもありだね、と思わせてくれる。それにSamsungの名前をふせておけば、これってAppleの製品ではないかと間違うほどだ。(Galaxy Tab についての詳細な記事”サムスンの新タブレット端末「Galaxy Tab」--その実力と位置づけ”がある。この記事を読むと、Samsungにもチャンスがありそうだ。)

AppleがSmartPhoneやタブレットPCのあり方を、製品として明確にしたがために、誰もがその具体的イメージを描き易くなったのだ。イメージできればあとは製品化するのみ。Appleの後を追うのは容易くなった。


■ Appleの弱点
Appleの弱点は、その閉鎖性にある。閉鎖性というか、Appleがすべてをコントロールしたいという強い意志にある。これは一長一短がある。コントロールすることは、Appleが提供する製品やサービスが一定水準以上のものに仕上がるということだ。Appleの製品を通して得られるサービスが一定のクオリティを保てるということだ。これはユーザにも利をもたらすだろう。
但し 、コントロールするということは、オープンでないということだ。オープンでないということは、普及率に限界があるということだ。
最近の記事をみると、このコントロールすることが足かせとなっていることをうかがわせる。
今年のWWDCでは、iAdが発表された。しかし、最近の記事”Adidas Gives Up On Apple's iAds Because Steve Jobs Is Too Much Of A Control Freak -- Scuttlebutt”によると広告の内容にApple側が関与しすぎるので、アディダスも音を上げてしまったようだ。
この閉鎖性は、ソーシャル化を阻むものでもある。この記事”Facebookはなぜ今 Android携帯を開発中なのか–iPhoneではトータルなソーシャル化が不可能だからだ”にもあるように、FaceBookiPhoneとの連携をあきらめ、自らSmartPhoneを提供しようとしている。SmartPhoneでのソーシャル化を目指しているのだ。
FaceBookの可能性は大きい。なにしろ、5億人もユーザがいるのだ。この記事”[How Facebook Can Become Bigger In Five Years Than Google Is Today”にもあるように、5年後にはGoogleをも越えてしまう可能性があるのだ。FaceBookの強みは、この5億人のユーザをターゲットして、広告をうつこともできるし、商品販売も可能だからだ。5億人ものユーザがいる企業は、おそらくこの世に他に存在しないであろう。
今後のインターネットとモバイルデバイスの市場を制するのは誰なのか?Appleとて盤石ではない。
されどAppleも危うし、である。