ネット検索革命

またまた、検索に関連した本を読んだ。

ネット検索革命

ネット検索革命

日本語のタイトルは、”ネット検索革命”と凄い題名であるが、原本の題名は、”Search Engine Society”である。原題の方が、本書の内容をよく表している。
検索と社会の関わりを概観し、未来の検索に、思いをはせるのだ。検索を単に”知識の発見”ではなく、そこから新たに”社会的価値を創造するもの”と意味づけている。
各章ごとに気になった言葉を抜きだしてみる。括弧内は、おいらのコメントです。

第一章 検索エンジン
・ウェブが、人間知識の拡大し続けるデータベースとなりつつあるために、情報を収集、要約、体系化、更新するシステムを創りたいと思っている人に取っては、最大の課題となっている。(注:インターネットが情報の膨大な流通経路となった今、ターゲットはインターネットにある。)
検索エンジンが現在利用している技術の多くは、最初は図書館で利用されたものである。(注:残念ながら、まだ検索の技術は、インデックスやテキストのマッチングに頼らざるをえないのだ。)
・多くの人が、ウェブという考え方の起源を、第二次世界大戦直後にヴァネヴァー・ブッシュが発表した論文「思いのままに」に置いている。(注:ヴァネヴァー・ブッシュ氏のことは、”ライフログのすすめ”の中でも言及されていた。この論文は、ここに掲載されている。http://www.theatlantic.com/magazine/archive/1969/12/as-we-may-think/3881/
・もしウェッブが、グローバルなOSになりつつあるなら、検索エンジン企業は、人々とソフトウェアやコンテンツを結ぶ、巨大な力を持っていることになる。(注:クラウド化が進み、ウェッブが全ての窓口となる。)
・最も興味をそそられる問題はおそらく、検索エンジンがいかにわれわれ人間を変えたか、であろう。検索エンジンを通じて人々の「意図」を測定するという、バッテルの示唆は正しいと思う。
・コミュニケーションは、人間社会的交流の要であるのだから。検索エンジンの役割を、単に社会の中においてではなく、われわれ社会生活に浸透するものとして、検証する必要があるのである。

第二章 検索すること
・必要とされる情報は、その文脈と関係している場合が多い。(注:検索を人間の行動と捉えるなら、その行動を表す言葉は、文脈のなかで大きく変わる。人間の嗜好や行動傾向性をバックグランドにした検索が登場したら凄いことになるかもね。)
・例えば検索の結果に満足なのか不満なのかといった、インターフェイスの中の出来事への反応さえも、ログだけでは分からない。(注:これは、現在の検索技術の限界を示している。でも、何か解決できそうな気もするが。)

第三章 注目
ハイパーリンク構造は単につながりを示すだけではなく、ある種の「投票」であることに、グーグルなどの検索エンジンは気づいたのだった。
・注目経済。(注:インターネットの検索ランキングは、まさに”注目”経済なのだ。)
・テレビは(大新聞もそうだが)、注目を集中させるメカニズムだからである。
・注目経済においては、検索エンジンがこうした富の最終的な集約者であり、広告主がその最も明白な収入源である。
・インターネットや、とりわけ検索の技術によってもたらされる最も興味深い変化は、注目の頂点ではなく、むしろロングテールの方、言い換えると、ニッチな情報共同体の相互作用の方にあるのだ。より平等な検索エンジンが現出するならば、それは周縁部からではないだろうか。

第四章 知識と民主主義
・問題は二層構造となっている。第一に、人々の注目という点で「勝ち組」と「負け組」とを峻別する、検索テクノロジーの問題。第二には、この「勝ち組」が、いったいどの程度伝統的な権威と釣り合っているのか、とうい問題である。(注:手厳しい言葉だ。但し、非常に重要だ。今の検索ランキング方式は、上位ランキングのページをますます上位にする方式なのだ。)
・もともとウェブでの検索は、学者や学生たちが、信頼のおける知識を求めて行うものだった。
・ユニバーサル・サービスを提供するという点で、専門家の義務であるといえる。そのシステムを使う人に多様性を認識することが、ユニバーサル・サービスなのだ。
・「検索知識人」という役割を果たす、新種のコミュニケーション専門家が登場している。ブロガーである。(本書の著作者である、アレクサンダー・ハラヴェ氏もブロガーである。http://alex.halavais.net/

第五章 検閲
・要するにグーグルは、リンク先のサイトが現地で違法な場合には検索結果に干渉し、それ以外の場合もいろいろと弁明した。
・グーグルが利用者の読書傾向を把握することになるのではないかと言うのだ。
・「世界で最良の学術図書館」が、私企業の支配下に入ることは間違いない。
・大手検索エンジンによる検索結果のランク付けは、三つの方針の影響を受けている。一つは検索企業の構築したアルゴリズム、そして国民政府の政策、さらに新知的財産権法規による知的財産権の強化である。
・グーグルは、単に悪意を持たないとういところからさらにバーを上げて、それが追求している世界規模での使命について倫理的な責任を持つべきなのだ。

第六章 プライバシー
・「最も重要なことは、自分というブランドのトップ・マーケターになることだ」
・集団や個人の欲望を調べる、史上最もひそやかな手段である。何が多く検索されているのかを調べることで、世界全体の意識が直接に分かる。(注:これ凄いことです。社会全体が、どのような感情や意識を持っているかわかってしまう。逆に言うと、それに迎合したり誘導したりすることによって、社会感情をうまくコントロールしてしまう危険性もあります。)
・検索企業は、国家政策の上を行くような倫理基準を守るべきなのである。
・家族、友人、職場、学校といったかつて別々であった集団が、情報の識別を強化するテクノロジーの力を通じて、統合されつつあるのだ。

第七章 ソーシャブル・サーチ
・「ソーシャブル・メディア」という言葉を最初に使ったのはジュディス・ドナスで、「コミュニケーションを強化し、人々の間に絆を作り出す」メディアだと定義している。
・ソーシャブル・サーチでは、多数の個人の判断を集積するインフラを提供するのである。(注:著者は、ソーシャブル・サーチが多くの可能性を秘めているといっている。)
・人間は、ウェブページと似ているのだ。(注:そうなのだ。人間自身が知の集積ではないか。)
・このウェブ上の新たな社会的空間は、「評判経済」をも創造する。
検索エンジンは、個人から知識への道筋をだけでなく、知識をつくり出す社会構造や集団パターンの変化をもたらす機動力となるのである。(注:検索エンジンが、社会を動かす原動力となる。受動的ではなく、より能動的なツールとなる。)

第八章 未来を見つける
・時代が、いわゆる「物のインターネット」へと移るにつれ、検索エンジンも、知識だけでなく、物自体にインデックスを付するようになるだろう。(注:物自体とは、現実世界と言いかえられる。本文でも言及しているが、ARがまさに現実世界にインデックスを付したものである。)
・動画や写真の取られた時間と場所を明記することで、ある場所の継続的な変化を積み重ねることもできる。(注:時間軸のログも重要だ。何故なら、時間はだれにもコントロールできないし、過ぎ去った時間は誰にもどうにもできないからだ。ログすることだけが許されている。)
・多くの人にとって、理想のインターフェイスは人間である。
・一つのSNSから他のSNSへのデータの「翻訳」が完全にできるようになれば、ソーシャル・ウェブが検索の中心に躍り出る可能性がある。


以上本文中から気になる言葉を抜き出してきたが、さてさてそれでは検索とは一体何なのか?そしてどこへ向かうのか?
検索する行為とは、人間そのものなのではないのか。知の探求と創造を目指す、人間の本来の行動ではないのか。検索とは、人間とは何かといった、探求を呼び覚ます行動の一形態なのだ。
検索はまず、自己の不足する情報を得るための行為である。そして、得た情報によって、本人が直面している判断に対して、判断材料を与えるものであるし、得た情報を再構築して、新しい価値を見いだすことでもある。
”検索”とは、”search”である。探し求めること、である。情報を探し求め、そして新しい価値の構築を探し求めることでもある。