FREE!

”FREE”を読んだ。"ロングテール"の名付け親として知られる、Chris Anderson氏の最新著作である。

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

本著作の評価は分かれるかもしれない。それは、全く新しいモデルを提示している訳でもないし、この"FREE"という考え方が、まだ発展途上であるからだ。この評価の迷いは、巻末の小林氏の日本語版解説の文章にも表れている。(小林氏の解説も一読の価値あり。)
但し、確実なことがある。それは、情報処理能力と記憶容量と通信帯域幅の向上がビットの価格を劇的に低減し、ビット(情報)がフリーになりたがることを加速させているからである。
本著作の冒頭で記されている、 "21世紀の無料は20世紀のそれとは違う。アトム(原子)からビット(情報)に移行した。" ことは事実であるからだ。

このため、"非貨幣的な生産経済が生まれる可能性は数世紀前から社会に存在していたが、ウェブがそれらのツールを提供すると、突然に無料で交換される市場が爆発的に生まれたのである。" ということが、今起きていることなのだ。

著者は、全てがFREEになると言っている訳ではない。
"潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる。"と言っており、稀少価値を否定している訳ではなし、"無料のモノやサービスが有料のものと釣り合って発展する必要がある。"と結論づけている。

FREEの形態として、昔からあるモデルも含め、著者は三つにまとめている。このあたりは、うまくまとめていますね。

FREEの形態1   直接的内部相互補助。あるものは無料で、付随するものは有料。
FREEの形態2   三者間市場あるいは市場の"二面性"。ある顧客グループが別の顧客グループの費用を補う。
FREEの形態3   Freemium。一部の有料顧客が他の顧客の無料分を負担する。本著は、この実験でもある。

FREE経済の好例として、中国とブラジルの例をあげている。中国では、不正コピーの氾濫が新しいビジネスモデルを生みだしている。音楽CDはただ。認知度の向上をはかるためだ。認知度向上により、コンサートやグッズと集客によるスポンサー獲得により利益を獲得する。
この様な、評判と注目経済が、新たな非貨幣経済を形成するのだ。この新たな非貨幣経済について、著者は述べる。"フリーは魔法の弾丸ではない。フリーで得た評判や注目をどのように金銭に変えるかを創造的に考えなければならない。" 結局ここに行き着く。
今は、"人間は潤沢さを目の当たりにしても、最初は気づかないこともあるのだ。"という状況であり、この状況を認識したうえで、"潤沢なものを素通りして、その近くで稀少なものを見つけること"を最重要とする必要があるのだ。
これからの新たなビジネスモデルを模索する方には、一読をお薦めする。但し、本著には明確な解答はない。ただ、模索の手掛かりはある。

※その他、気になった文章をピックアップします。
★値段がつくことで私たちは選択を迫られるからだ。それだけで行動をやめさせる力を持つ。つまり、無料はひとつの市場を形成し、いくらであろうと有料になると別の市場になるのだ。 ☞  無料と有料が人間の購買心理に与える影響を端的に述べている。
アラン・ケイGUIの仕事は、一般の人にコンピュータを解放することで世界を変えることに発展した。 ☞ Appleの発展もこのアラン・ケイが源流にある。
ティム・オライリーの言葉。「作家の敵は著作権侵害ではなく、世に知られないでいること」 なのだ。 ☞  納得。
ベルトラン競争。競争市場においては、価格は限界費用まで下落する。 ☞  そうなんだよね〜。
★インターネットとは、民主化された生産ツール(コンピューター)と民主化された流通ツール(ネットワーク)が合体したものである。 ☞  確か、"ロングテール"にも書かれていたと思うが、いいフレーズだ。
★贈与経済。ネイテイブアメリカンのいくつかの部族には、贈り物は自分で保有しないで別の人にあげるべきだとされた。 ☞  この贈与経済的な発想を取り入れたビジネスモデルも、ありのような気がする。
アダム・スミスは正しかった。啓発された自己意識こそ、人間のもっとも強い力なのだ。 ☞  アダム・スミスは偉大だ。
★ある製品が他のものより圧倒的にすぐれているときは、価格を決定する第一の要素は限界費用ではなく限界効用(消費者にとって価値のあること)になる。オンラインの世界では、限界効用はサービスの特徴を反映するか、消費者がどれだけそのサービスにからめとられているかを反映する。 ☞ ダントツのナンバーワンは、限界効用の利益を享受できる。
半導体は物質経済の崩壊を示している。 ☞ ちょっと過激過ぎるが、これにハードデイスクも仲間に入れてくださいね。

わっ!読後感想が長くなってしまった。最後に、freeアプリの紹介。おいらは、あまりゲームアプリはプレイしないのだが、飽きもせずプレイし続けている一品がある。それは。”Solitaire City”だ。
何がいいのかというと、簡単でワンプレイの時間が短い。それに何と言っても、操作性とビジュアルと効果音が抜群によい。トランプを配る時の音やトランプをめくる時の効果音が、実に小気味よいのだ。今まで Rule 1は、967回もプレイした。(他のRuleもやったが、おいらには難しい。)実を言うと、トイレの中でもプレイしている。最初は、最短時間に挑み続けたが、最近は勝率にこだわっている。現時点では、45% の勝率だ。勝率5割が目標だが、ハードルはかなり高いな〜。
Solitaire City? Lite